研究課題
水溶性フェノ-ル樹脂の硬化速度を支配する因子について検討し、温度以外に重要な因子として、樹脂の分子サイズ、樹脂濃度、ホルムアルデヒド/フェノ-ル モル比、アルカリ/フェノ-ル モル比および添加剤の五つをとりあげ、これらの硬化速度に及ぼす影響を定量的に明らかにした。樹脂の硬化速度は樹脂の分子サイズの増加とともに直線的に増大する。また、樹脂の縮合反応速度は樹脂濃度の2乗に比例すること、樹脂の硬化速度はホルムアルデヒド/フェノ-ル モル比3以下においてこのモル比の2乗にほぼ比例的であること、アルカリ/フェノ-ル モル比の最適点はホルムアルデヒド/フェノ-ル モル比によって異なることから、樹脂のホルムアルデヒド/フェノ-ル モル比をできるだけ高くし、最適のアルカリ/フェノ-ル モル比を選び、樹脂の縮合度を高めるとともに樹脂濃度を上げれば速硬化性フェノ-ル樹脂ができることがわかる。しかし、これらの方向は同時に樹脂液の粘度を増大させ、可使時間を短縮することになるため、液状樹脂では実用化が難かしい。一方、各種添加剤の検討から、炭酸塩が有効なこと、レゾルシノ-ルはホルムアルデヒドと一緒に添加するとかなり有効であるが、粘度変化が大きく、可使時間も短いなど問題点が多いこと、これに対して高分子量の粉末状フェノ-ル樹脂(ノボラック)を添加して懸濁系とした接着剤は速硬化性であり、高含水単板の接着に極めて有効であることがわかった。この懸濁系は上記液状樹脂での改善方向のうち樹脂の縮合度を高めることおよび樹脂濃度を高めることを実現したもので、粘度の増大を懸濁系とすることで防いだものである。このようにして、水溶性フェノ-ル樹脂ー高分子量粉末フェノ-ル樹脂懸濁型接着剤をデザインすることができた。
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