研究概要 |
62年度は、本方式による汚水処理は他の処理装置と遜色のないと結論を下した。63年度は、同じ装置による実験を継続し、次に述べる二点を明らかにした。一つは汚泥の発生しない処理方法の可能性である。実験中昭和63年6月頃より、汚泥濃度が急激に低下するという現象がみられた。当初は、流入する汚水の濃度が低いためではないかと予想された。しかし、ある日を境にして汚泥が全く消滅してしまった。水質分析を行うとそれでも十分排出基準を満足することが示されていた。その原因が何によるものか始め分からなかったが、良く観察した結果、無数の貝が側壁に付着していることが判明した。貝が汚泥を食べるため、その発生が見られないのかどうかを確かめるために、MLSS濃度が500mg/l程度になるよう、別の施設から活性汚泥を投入し観察を行った。その結果、一夜にして汚泥は食べ尽されてしまった。河川における浄化機構と同じことが起こっていたと見ることができる。水温の低い時においても貝が成長すれば、汚泥(沈殿槽の生汚泥は別)の発生しない浄化方式として注目できるものである。二つ目は、MLSS濃度の増加による曝気係数への影響がどのようになるかと言うことである。従来からMLSS濃度の増加による酸素の移動性能が低下することは指摘されていた。しかし、その測定はかなり困難であった。本装置は、酸素移動が行われる距離が短いので、この間での汚泥の呼吸による酸素の消費速度を無視できる。そこで、各MLSSの濃度別に曝気係数K_Laの値を測定した結果MLSSがK_Laに大きく影響することが判明した。清水の時のK_Laを1とすれば、MLSS濃度が3,000mg/lの時、その値は0.77となり、6,000mg/lの時の0.49となり、半分にまでその能力が低下することが判明した。これは他の活性汚泥法にも言えることで、ここで測定されたデータは重要な資料として生かされるだろう。
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