研究概要 |
昨年度作製した組換えDNApUBE2からSODの遺伝子を含む1073bpの断片を分離し、これをpUC118につなぎ込み、部位特異的変異体作製のためのプラスミドpUBE118を得た。次にArg-143をHis、Asn、Aspに置換するため、6種類のオリゴデオキシリボヌクレオチド21ーmerを化学合成した。これら合成DNAをプライマーにすると、ArgのコドンCGTを、CAT,CAC=His;GAT,GAC=Asp;AAT,AAC=Asnとすることができる。Amersham社製のmutagenesisキットを用いて、上記プライマーをpUBE118のSSDNAにアニールした後、DNA合成を行い、多数のクローンを得た。各クローンのDNA塩基配列を決定したところ、ArgがHis、Asn、Aspに置換されたpUBE118-1、pUBE118-2、pUBE118-3が得られた。 さらに、上記プラスミドを大腸菌TG1に導入し、小スケールで培養し、マイマイシンC2μg/mlの存在下に37℃で2時間誘発合成を行った。誘発後全菌体の蛋白の一部を12.5%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行ったところ、His、Asn、Aspのいずれの置換体も野生型(Arg)とほぼ同程度誘発合成されていた。 次に菌体の粗抽出液を12.5%の通常のポリアクリルアミド電気泳動にかけた後、SODの活性染色を行ったところ、His置換体は野生型(Arg)に比べ、約1/10に活性が低下していた。また、Asn置換体は1/100以下に、Asp置換体は全く活性が認められなかった。以上の結果からArg-143の正の電荷はSOD活性に必須であることが強く示唆された。 本研究によって得られたSODのHis置換体は、pUBE118-1から効率よく合成することが可能であり、しかも酵素活性をある程度保持していることがわかった。今後さらに、その安定性を多角的に検討する価値があるものと考えられる。
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