研究概要 |
スーパーオキシドデイスムターゼ(SOD)はスーパーオキシド濃度を低下させ生体を酸素障害から保護する機能をもつため、臨床的に炎症、虚血性疾患などにおいて、全身または局所投与が考えられている。ところがSODは熱や変性剤に対し安定であるにもかゝわらず、反応生成物である過酸化水素により失活しやすいという欠点をもつ。我々はヒトのCuZu-SODのCDNAをクローンし、遺伝子工学的にアミノ酸置換を行い、大腸菌で発現させることにより安定なSODの生産を目指して研究を行った。 ヒト胎盤CDNAライブラリーから分離した、ヒトCu、Zu-SODプラスミド_PSOD2から、ユリシンE_1プロモータを利用した発現プラスミドPUBE2を作製し、大腸菌W3110株に導入した。プラスミド保持菌をユリシンE_1遺伝子の発現を誘発することが知られているマイトマイシンCにより処理すると、ヒトSODが大腸菌蛋白質の12%程度を占めるにいたった。 次にPUBE2から、部位特異的変異体作製のためのプラスミドPUBE118を作製し、オリゴデオキシヌクレオチドを用いて、Arg-143をHis,Asu,Aspに置換下SODを生産するプラスミドを作製した。これらのプラスミドを大腸菌TGIに導入し、マイトマイシン処理により誘発後、全蛋白の電気泳動分析を行ったところ、His,Asn,Aspのいずれの置換体も野性型(Arg)とほい同程度の蛋白が合成されていた。さらに、菌体の粗抽出液を電気泳動後SODの活性染色を行ったところ、His置換体は野性型に比べ、約1/10に活性が低下していた。またAsn置換体は1/100以下に、Asp置換体は全く活性が認められなくなっていた。 本研究によってえられたSODのHis置換体は、今後さらにその安定性を多面的に検討する価値があるものと考えられる。
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