研究概要 |
本研究はグルココルチコイド(GC)作用増強物質を、合成あるいは天然資源より大量に得る方法を確立し、これを用いて各種のステロイド療法の改良を試みる研究である。我々はGC作用増強物質として、GCに対する細胞の感受性を増強するGC Sensititivity Amplifier(GSA)を腸内細菌産生物質の中から見出だし、構造をPseudouridiny-Nーoleoylphosphamateと決定した。一方GCの示す最大効果を標的細胞でさらに増幅させるGC Potency Amplifier(GPA)も見出した。GPA作用を示す物質群(EGF フォルボールエステル,ジアシールグリセリド)は、いずれもプロテインキナーゼCの活性化物質で、プロテインキナーゼCの阻害剤はGC作用を完全に制御した。このことからGC作用の発現に、プロテインキナーゼCが必須であり、その活性化剤はGC作用を増幅すると思われる。我々は菌体の培養条件の改良により、GSA物質の菌体内含量の増加を試みた。P.miraoilisは、高濃度のHistioine存在下、後期対数増殖期で特異的にGSA含量が増加した。一方大量合成を確立するため、酸素学的にPseudouridine 5′-Phosphateを大量合成する方法を確立した。しかしOleamideとPseudouridine 5′-Phosphateの縮合は困難で、またこれを可能にする合成法がみつかっていない。一方GC作用におけるプロテインキナーゼCの役割をプロテインキナーゼCの阻害剤(H-7)を用いて検討した。H-7で肝細胞を処理すると肝細胞質分画のGCレセプターは、熱ショック蛋白(HSP-90)と解離せず、活性化と核内への移行が阻止され、GC作用が抑制されることが明らかとなった。以上の新たに明らかになったGCの作用機序を参考に、GPA,GSAを利用した新ステロイド療法の開発をL0178Y,L1212リンパ性白血病細胞を用いて試みている。
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