研究課題/領域番号 |
62870023
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 市郎 北海道大学, 免疫科学研究所・化学部門, 教授 (50028411)
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研究分担者 |
瀬尾 寛 富士紡績株式会社, 商品開発研究所, 課長
杉村 和久 北海道大学, 免疫科学研究所・化学部門, 助教授 (80127240)
石原 智明 北海道大学, 免疫科学研究所・動物施設, 助教授 (90082172)
済木 育夫 北海道大学, 免疫科学研究所・化学部門, 助手 (80133776)
戸倉 清一 北海道大学, 理学部・高分子学課, 教授 (40000806)
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キーワード | スルホン化キチン / スルホン化キトサン / 癌転移抑制 |
研究概要 |
本年度は種々のスルホン化キチン及びその誘導体を用いてマウスにおける転移性腫瘍細胞B16ーBL6メラノーマの肺転移抑制効果及びその機構について検討した。chitin,70% deacetylated chitin(DACー70)及びcarboxy-methyl chitin(CM-chitin)とそれらのスルホン化誘導体(s-chitin,SCM-chitin,S-DAC-70,N-SCM-DAC-70)を合成した。これらのキチン誘導体をB16ーBL6細胞と共に静脈内投与後、2週間目の肺転移結節数を調べた結果、S-chitin及びSCM-chitinは著明に肺転移の抑制効果(実験的肺転移)を示したが、S-DAC-70、N-SCM-DAC-70及びCM-chitinは全く抑制効果が認められなかった。SCM-chitin及びS-chitinはそのスルホン化の程度に比例して肺転移の抑制効果を示した。また、スルホン化度の高いSCM-chitinは用量に依存して肺への転移を抑制し、マウス当り50〜100μgの用量で未処置対照群に比して有意な差が得られた。この肺転移の抑制効果は予め抗アシアロGM_1抗体あるいはカラゲナンを前処置し、チチュラルキラー細胞やマクロファージを除去あるいは欠損させたマウスでもSCM-chitinの投与により有意な転移抑制効果を示した。一方、自然肺転移実験系において、B16ーBL6細胞をマウスの足蹠に移植後7日目より2日毎に7回SCM-chitinを静脈内に投与した場合あるいは移植後21日目に原発巣(約9〜10mm径)を外科的に切除し翌日より2日毎に7回SCM-chitinを静脈内投与した場合にも、未処置対照群に比べて有意な肺転移の抑制効果を示した。CM-chitinは実験的肺転移系と同様に全く抑制効果が認められなかった。これらの結果から、スルホン化キチンの肺転移抑制機序は宿主の免疫系細胞の活性化及び賦活とは関係なく、むしろ他の機構が関与している可能性が示唆される。
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