研究課題/領域番号 |
62870023
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 市郎 北海道大学, 免疫科学研究所, 教授 (50028411)
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研究分担者 |
瀬尾 寛 富士紡績株, 商品開発研究所, 課長
杉村 和久 北海道大学, 免疫科学研究所, 助教授 (80127240)
石原 智明 北海道大学, 免疫科学研究所, 助教授 (90082172)
済木 育夫 北海道大学, 免疫科学研究所, 助手 (80133776)
戸倉 清一 北海道大学, 理学部高分子学科, 教授 (40000806)
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キーワード | 硫酸化キチン / 硫酸化キトサン / 免疫増強活性 / 癌転移抑制 |
研究概要 |
本年度は硫酸化キチン及びその誘導体を用いてマウスの転移性腫瘍B16-BL6メラノ-マの肺転移抑制効果及びその機序について検討した。実験的肺転移系の成績から、転移抑制活性の発現には分子中のN-アセチルグルコサミン部分の6位の硫酸基及びN位のアセチル基が重要な役割をしていることが明らかとなった。これらの誘導体のうち、硫酸化度の高いSCM-キチンIIIは自然肺転移モデルにおいて原発腫瘍の外科的切除前あるいは後に投与しても強い転移抑制効果を示した。SCM-キチンIIIは構造上ヘパリンに類似しているにもかかわらず、ヘパリンの有する抗凝固及び抗血小板凝集活性をほとんど示さない。硫酸化キチン誘導体は免疫増強効果(ILー1産生能、マクロファ-ジ活性化など)も示さなかった。抗アシアロGM_1抗体やカラゲナン処理マウスにおいてもSCM-キチンIIIは実験的肺転移を著明に抑制した。放射標識癌細胞と共にSCM-キチンIIIを静脈内投与した結果、肺における癌細胞の停滞・補捉は投与後24時間内に有意に抑制された。SCM-キチンIIIは癌細胞の肺血管内皮細胞への接着には影響を及ぼさなかったが、血管内皮下細胞外マトリックスへの接着を有意に抑制した。また、トランスウェルチャンバ-を用いた癌細胞の細胞外マトリックスへの移動あるいは浸潤実験系においてSCM-キチンIIIは濃度(用量)に依存して強く抑制した。これらの結果から、硫酸化キチンの肺転移抑制機序は宿主の免疫系細胞の活性化や血小板や凝固系との相互作用とはむしろ関係なく、癌細胞の細胞外マクリックスへの接着・移動・浸潤の抑制と関係していることが示唆された。
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