糖タンパク質の糖鎖に対する抗体を作製するのは非常に難解であり、2〜3の例を除くと現在までほとんど報告がない。我々は、ヒト肝臓癌の組織よりγGTPを精製し、その糖鎖をヒドラジン分解によって分離した。次に、マウスの血清アルブミンとこの糖鎖とを科学的に結合させ、抗原としてマウスに免疫することにより、γGTPの癌化により変異した糖鎖を認識するモノクローナル抗体を作製することに成功した。得られた抗体をもとにエンザイムノアッセイ(EIA)法を用いて正常人、各種癌患者の血清中の変異γGTP量を測定した。 その結果、1.γGTP-オリゴ糖に対するモノクローン抗体。 2つのモノクローン抗体が得られた。そのうち、γS-54-29は、ヒト肝癌およびヒト腎臓γGTPと反応したがヒト正常肝γGTPとは低い反応性しか示さなかった。 2.γS-54-29抗体の特異性の検討。 本抗体をSDS-PAGEで泳動し、次でWestern blottingを行ったところ、γS-54-29抗体は肝癌およびヒト腎γGTPの大サブユニットとのみ反応し、小サブユニットとは反応せず、本抗体がγGTPの大サブユニットを認識するものであった。 3.各種患者血清中のγS-54-29と反応するγGTPレベル。 種々の悪性腫瘍患者などの血清のγGTPレベルをγS-54-29を用いたEIAで測定した。その結果、肝癌、転移性肝癌(原発は他臓器)、肝炎などで高値を示す例が多かった。肝硬変、肝癌、胆石などでは高値を示さなかった。正常人血清の平均値+2SDをカットオフ値として用いた。
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