これまでの成績をもとにして乳幼児の脳血流を検知する実験装置を試作し、種々の実験を行いその実用性について検討した。 装置は、ポリ容器水槽内にシリコンチュ-ブを浸し、この中を赤血球の直径と同じポリマ-懸濁液をチュ-プポンプで拍動させながら流して動脈中を流れる血液をシュミレ-トした。振動子をゴニオメ-タ-にとりつけシリコンチュ-ブと並行および直角方向に設置して超音波ビ-ムの照射と反射の状況について実験を行った。 実験に使用した幅7mmの振動子の指向角は理論計算では、約3°である。実験によると超音波ビ-ムの中心がシリコンチュ-ブからずれた状態では、振動子のわずかなずれがあっても超音波の反射を検知するのは困難であることがわかった。したがって、超音波のプロ-ブを新生児の頭部に取り付けても頭部の動きによって血管からの超音波の反射を検知するのは容易でないことが明かとなった。一方、新生児の大泉門部位に超音波プロ-ブを直接接触させ固定することが困難で、いろいろと試みたが、すべてモニタ-として長時間の使用には耐えられなかったり、超音波反射を安定して検知させなかった。また、たん棚型の振動子を並べて直接スキャンニングで頭部の動きに対応できることを試みたがこの方法では目的が達せられないことがわかった。 対象が新生児であることは、はじめ予想していたものよりはるかに信号が微弱であった。そのため思いもかけないいろいろな悪条件が重なり、今回の試作は残念ながら失敗に終わった。しかし、電子スキャンニングの方法は検討の余地を残しており、とくに、たん棚型の振動子を血管と並行に多数並べ、各々の振動子の励振に位差を与えて超音波ビ-ムの指向角度を自由に変化させてスキャンニングするアンギュラ-スキャンニングは残された可能性の中で最適な方法と考えられ、検討中である。
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