初年度に作成したシリコンフォトダイオ-ドおよびプリアンプを次年度に作成したIC RAMをもつ本体と結合し、検出したエネルギ-スペクトルから実効線量当量に換算するためのプログラムを開発した。装置全体の消費電流が大きいため、電源である電池を小型にすることが困難であった。電池面積の線量計にたいする割合は約1/10をしめた。このため当初予定した7mm厚程度の線量計から、15mm厚の線量計に設計変更を余儀なくされた。現在作成した線量計の電池寿命は、連続使用で10時間である。線量計のエネルギ-特性は、初年度に報告したように低いエネルギ-になるに従って大きくなる。このエネルギ-特性で補正し、入射してくる放射線エネルギ-毎のフルエンスを求め、エネルギ-に応じた換算係数で補正することにより実効線量当量を得ることにした。線量計で検出したスペクトルは、検出器(シリコンフォトダイオ-ド)表面材質の影響によるコンプトン散乱線が僅か認められるが線量当量を求める際、過小評価を防ぐ意味で補正の対象にはしなかった。補正のための式は、エネルギ-特性曲線および実効線量換算係数に対して多項式近似によった。多項式近似による補正曲線の相関係数は0.99であった。以上述べたように、被曝したときの、放射線のスペクトルをコンピュ-タ(次年度に作成したプログラムによる)で読みだし、エネルギ-補正を行なったのち、実用便宜量である実効線量当量を計算し出力できる線量計を作成した。被曝エネルギ-スペクトルをパ-ソナルコンピュ-タに描かせるようにしたため、被曝したときには放射線業務状況を推定できる利点を持っている。作成した線量計は、当初予定していたものより、大型で、また電池寿命の短い欠点が生じた。しかし、この線量計は、より薄型の線量計を作成するために貢献できると推察される。
|