研究課題
本年度は研究計画に従って、1.動物実験における抗血栓性の評価、2.試作弁の改良、を行なった。1.動物実験における抗血栓性の評価動物実験による検討は昨年度に引続くもので、山羊を用いて国立循環器病センター型補助人工心臓の流入出弁にポリウレタン弁を用いて高流量バイパス群と低流量バイパス群に分けて抗血栓性の評価と、血栓形成の原因の解析を行なった。やはり、低流量群に血栓形成が多く、また、流入弁の方に血栓は効率に発生した。血栓の発生部位は、弁葉とコンデュイットで囲まれたポケット低部に発生した。低流量群での血栓形成と弁のポケット低部での血栓発生は、血液のwash-outが充分でないことが大きな原因と考えられた。一方、高流量群でも流入弁に血栓形成が見られたことより、血栓形成とポリウレタン弁にかかる応力集中との関連が疑われた。そこで、模擬回路により動物実験での高流量と低流量を得る駆動条件を再現し、流入出弁にかかる応力集中と密接に関係するwater hammerを測定した。その結果、高流量群では流入弁に、低流量群では流出弁に高いwater hammerが発生することが解った。この結果より、改めて耐久性の向上のためばかりではなく、抗血栓性を上げるためにも、応力集中の少ないポリウレタン弁の開発の必要性が確認された。2.試作弁の改良ポリウレタン弁にかかる応用の解析に基づく弁葉のデザインの改良を開始した。同時に、抗血栓性をさらに向上させるためにコネクターを用いずに、補助人工心臓の流入出部にシームレス構造でポリウレタン弁を組み込む方法を開発した。この方法は、これまで弁の製作に用いてきたディッピング法に基づいて、ポンプの血液接触面と同一のシリーズのポリウレタンにより製作する方法で、引続き発展させて行く予定である。
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