研究概要 |
神経伝達物質の磁気共鳴イメージング(MRSI)を行なうために、新しい方法であるSIDA(spectroscopic imaging by dephasing amplitude change)を高分解能NMR装置(4.7T、9cmφJEOL)に組込んだ。乳酸、アミノ酸などの標準試料液及びラット脳にて、MRSIを試みた。本装置を用いて、高濃度の乳酸、アミノ酸(N-acetyl aspartate,GABA,Glutamine)の標準液ではMRSIが可能であった。しかし、低濃度の標準液やラット脳では実用時間内にMRSIを得る事はできなかった。但し、死亡後のラット脳の乳酸は検出できた。この理由は磁石内全域の均一な磁場が得られないことと、過電流のため高速の傾斜磁場の切り交えができないなどのハードウェア上の制約のためであり解決が困難であった。次に、2.0TMRI/S装置(100cmφ、旭メディカル)を用いて、標準試料、ウサギ脳、ヒト上腕について実験を行なった。同じく、高濃度の標準液では良好なMRSIを得ることができたが、ウサギ脳及びヒト上腕では良好なMRSIを得ることができなかった。これは、水のピークの消去が困難であったためと、磁場の均一度を充分上げられなかったためであった。水ピークの抑制はpresaturation法を用いたが、測定までの時間中に、水ピークが回復し最終的には1/100位しか抑制できなかった。実際には少くなくとも1/1000〜1/10000にする必要があり、そのために信号検出前に1ー3ー3ー1法などの方法を加えねばならないと結論付けられ、現在検討中である。また、2.0Tでは信号強度が充分ではなく、また磁場均一度の不充分さなどの問題のため、神経伝達物質、アミノ酸などの低濃度物質のMRSIを得るのには適していない。さらに4.7Tでも、今回用いた小口径の縦置き磁石では、磁石内の広い範囲に均一な磁場を得る事が困難でMRSIを行なうには適していない事が判明した。このため、少なくとも4.7T以上(できれば7T)の水平置き大口径磁石が必要である。今後、米国との共同研究で、この研究課題を発展させてゆきたい。
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