Na^+ポンプの分子機構及び微量でしか得られない酵素の反応機構を、解明するために、2波長高感度ストップドフローケイ光光度計の試作と実用化を行った。1回の測定に要するサンプル量は0.12ml×2であり、単一の励起波長により、励起されたケイ光を異なった2波長で検出する。励起光及びケイ光は共に光ファイバーによって観測室へ及び検出器へ導かれるそのためわずらわしい光路調整は不必要となった。本機器及びそのプロトタイプを用いて得られた研究結果は以下の通りである。 Na^+、K^+-ATPaseが、ATPのみならず、リン酸化能をもたない、ATP類似物で活性化される。Na^+、K^+-ATPaseのSH基に導入した蛍光プローブ間で、ケイ光エネルギー移動が生じる。そのさい相を異した、ケイ光変化が生じる。これらの結果はNa^+の輸送とそれに続くK^+の輸送に際して、Naポンプ分子の種々のドメインで相をずらした構造変化が生じる事、又この構造変化の原因はNa^+ポンプへのMg^<2+>、Na^+及びATPの結合によって生じるものであり、ATP加水分解が、ポンプをエネルギー化しているのではない事を示している。 今後本器を用い、異種のケイ光プローブを導入したポンプにおける、これらプローブ間距離の測定に必要な基礎データを蓄積する予定である。
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