今年度の研究予定は、センサ-と歯肉間の最適な位置関係を求めること、および外来診療室にて歯周疾患を有する患者より脈波を導出し、歯周治療前、治療中、治療後における波形を分析、各種診査指標との関連性を追求することであった。 まず、最適な導出条件を求めるために暗室下で歯肉表面より光を当て、光検出用ファイバ-束と歯肉との距離を変化させながら臨床的に健康な上顎前歯唇側付着歯肉よる反射光光電脈波を導出した。その結果、光ファイバ-束と歯肉との距離が小さい程波形のdicrotic notchが鮮明になることがわかった。また、歯肉内に一旦入射した光成分が再び歯肉表面より出て検出されるのを除去するため、歯肉表面を光不透過性の白色被膜で覆ったところ、被膜で覆わずに光ファイバ-束を歯肉に近づけた場合と同様の波形が得られた。 この結果をもとに、外来診療室で脈波の導出を試みたところ、アルミホイルを用い測定部周辺を遮光して導出すれば、室内灯点灯状態で脈波検出が可能であり、アダプタ-の作成等事前の準備が整っていれば検査に要する時間はごく短いものであった。 現在、実験的歯肉炎を惹起させた例で暗室下で脈波の導出を試みると同時に、外来診療室で初期治療中および動的歯周治療中の歯周疾患者を被験者として脈波の導出にあたっている。慢性辺縁性歯周炎の患者では、歯肉から得られる光電脈波は正常歯肉の場合よりも振幅が小さく、そのdicrotic notchも不鮮明な傾向が認められた。
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