歯肉の炎症では局所循環系の変調を伴うので、脈波の変化として病状を検出できる可能性がある。本研究は発炎した歯肉微小領域より光電脈波を導出し、正常波形との相違から炎症の性状を推定しようとするものである。まず、予備実験で脈波を検出する各種条件を定めた。光源は25W白熱電球を安定化電源にて点灯して用いた、。直径50μmの光ファイバ-を照射および採光の2系統各100本用い、光源、測定部および光センサ-間を連結した。測定部では照射および採光のファイバ-が互いにランダムになるように配置した。 透過光光電脈波は口蓋側より、反射光光電脈波は唇側より光を当て、いずれも唇側より脈波を導出した。光センタ-としてはS/N比が最も良好であったCdSe素子を用いた。得られた脈波は同時に記録した心電図のQRSスパイクで同期をとり10〜20回の平均加算処理を行なった。 まず、光ファイバ-束と歯肉間の最適な位置関係を調べ、ついで外来診療室にて患者より脈波を導出し、歯周治療前、治療中、治療後の波形を比較して、各種診査指標との関連性を追求した。 光ファイバ-束と歯肉間の距離が小さい程、波形上のdicrotic notchは鮮明に記録された。反射光光電脈波を記録する際には、歯肉表面を光不透過性の白色被膜で覆う方法で良好な結果が得られた。外来診療室では、アルミフォイルを用いて測定部周辺を遮光すれば室内灯点灯状態でも脈波検出が可能であった。 現在、実験的歯肉炎の症例で暗室下で脈波の導出および解析を行なうとともに、外来患者にて初期治療あるいは動的歯周治療中の脈波の相違を解析中である。慢性辺縁性歯周炎の患者では、正常歯肉を持つ人に比べ歯肉より得られる光電脈波の振幅は小さく、そのdicrotic notchはより不鮮明である傾向が見られた。
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