研究概要 |
本研究の目的は、水溶液系を対象とするプロトンNMRの高感度測定が可能な分光計を開発することである。一見容易に見える水溶液中のプロトンNMRの測定は、巨大な水のシグナルの存在の下で、微小なシグナルを検出することが要求されるため、実際には極めて困難であり、高度に進歩したNMRのテクノロジ-が現在もなお未解決のまま残している深刻かつ重要な課題である。本研究においては、NMRのソフト、ハ-ド両面にわたる開発に多年にわたる経験をもつ申請者のグル-プが日本ブルカ-社の協力を得て、in vivo用プロトンNMR分光計の設計と製作を行った。 本研究において得られた成果は以下の通りである。 1.分光計の運転を開始し、ラット好塩基球細胞株2H3,酵母細胞などにおける代謝過程を解析した。水の線形、S/N比とも計画通りの良好な結果を得ている。 2.光CIDNPの実験を開始した。1.6Wアルゴンレ-ザ-とNMR分光計の接続を行い、種々のタンパク質の表面に存在するTyr,Trp,His残基のミクロ環境について、きわめて直接的な知見を得ることが可能となった。 3.本分光計を用いて、免疫グロブリンなど巨大タンパク質の構造解析を行った。この結果、水溶液中においても、1D,2D,多核種NMRの測定においてきわめて良好な結果が得られた。
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