研究概要 |
薬物とそれの受容体との間の相互作用をそれぞれの分子構造をコンピュータグラフィックスの画面上で組立て、結合体の安定性を分子力学的にその場で評価することによってその受容体に働く薬物の作用と効果を評価し、類縁薬物の導出や新規の先導化合物の創製に役立たせるシステムを開発する目的で、昨年度までに受容体の構造が既知の場合(判明しているか、推定されている場合)に用いるシステムを開発した。本年度は受容体の構造が知れていない場合に、その受容体に働くと思われる多数の薬物の構造上の特徴から受容体の分子構造上の特徴をマッピングするシステムを完成させた。これによって得られる受容体モデルは、種々の薬物分子との結合から想定される薬物結合部位の大きさ、形状、種々の物理化学的性状、例えば静電的性質、水素結合形成官能基の位置と性質、の空間的分布図であって、従来取扱いが困難であった、化学構造が異なるにも拘わらず同一受容体への結合が強く示唆されるような化合物をも取扱うことができるようになった。適用例としてTPAタイプの発がんプロモーター類の構造と活性の関係を明らかにした論文を発表した("A Receptor Model For Tumor Promoters.Rational Superposition of Teleocidins and Phorbol Esters",Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.85,3688-3692,1988.by A.Itai et al.)。
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