研究課題
炎症部位のホスホリパーゼA_2について:1.従来研究を続けてきた、ラットおよびヒトの酵素に加え、ウサギおよびウマにも同様の細胞外ホスホリパーゼA_2を見いだした。部分アミノ酸配列は約70%が相同性を示し、種を越えて、非膵臓由来の分秘性ホスホリパーゼA_2が存在することが示された。2.抗原タンパクをあらかじめ静脈投与したラットの腹腔内に抗体を接種することにより、胸膜炎モデルを作製した。細胞外浸潤液中には、炎症反応の進行に伴って、酵素学的および免疫化学的に同一のホスホリパーゼA_2が検出された。このことは、免疫反応(III型アレルギー)によって惹起された炎症反応にも、細胞外ホスホリパーゼA_2が関与しているものと予想された。3.ヒト前骨髄球系白血病細胞株HLー60をレチノイン酸で処理して顆粒球系細胞に分化させた細胞を、CaイオノフォアA23187で処理して、プロスタグランジンE_2を産生させた。この時ヒトリウマチ患者関節腔から精製したホスホリパーゼA_2を添加するとPGE_2産生量が用量依存的に増大し、炎症部位で本酵素がアラキドン酸代謝に関わり得ることがわかった。酵素活性調節因子:1.ヒト血漿より補体第3因子を多量に精製した。精製C3をトリプシンで部分分解し、分解産物を分離精製した。分解産物は、ヒトリウマチ患者関節腔から精製したホスホリパーゼA_2を用量依存的に阻害した。このことは、昨年我々がラットを用いて見いだした、"補体第3因子分解物が新しいタイプのホスホリパーゼA_2阻害タンパクである"という結論が、ヒトでも成り立つことを示している。2.ラットC3遺伝子をクローニングし、構造決定した。その結果、我々がホスホリパーゼA_2阻害タンパクとして同定したタンパクは、ヒトC3の分解物として同定されているC3dgに相当することがわかった。
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