昭和63年度実績報告書 レーザー光化学治療法は、レーザー光により感光色素を一重項状態に励起し、一重項状態から励起三重項状態に遷移する感光色素により光化学反応を起こさせ、腫傷破壊すなわち、ガンの治療を行うものである(便宜上、これを単一波長励起法あるいは照射法と名付ける)。 一方、この感光色素の三重項状態をさらに励起し、強力な光化学反応を起こさせる方法が提唱されている。この方法は感光色素の一重項および三重項状態を同時に、あるいはわずかな時間差を与え励起することから二波長励起法、あるいは二波長照射法と呼ばれる。本研究の目的はこの方法の臨床応用を可能にする具体的なシステム開発にある。更に、現在多くの施設で用いられているレーザー光化学治療システムに対しても本システムが応用できるよう、実際的な方法を検討し、提供することを第二の目的としている。 昨年度および本年度において実施した研究は 1.昭和62年度において試作・開発したシステムを用い、腫傷親和性感光色素 投与下で、二波長照射あるいは単一波長照射について次の項目にわけ、検討を加えた。 1)培養細胞における細胞破壊効果。 2)担癌マウスにおける腫傷破壊効果。この結果、二波長照射は従来の単一波長照射に比べ、腫傷破壊の浸達長に於て遙かに優れた結果が得られた。 2.上記のデーターに基づき、本システムの臨床応用における実用性を高めるため、マイクロプロセッサーのソフトウェアの修正を行なった。 3.二波長励起・照射法の物理化学的性質を明らかにするため、各種ボルフィリン誘導体の励起三重項状態の測定を行い、本法の作用機序に対する考察を行なった。
|