われわれは、平行平板電極に多孔性試料を挟み、液体に接触させると、試料中の空気が液体に置換され、電極間の誘電率が鋭く変化する現象を利用し、電気容量測定に基づく専用の測定装置を試作して、繊維集合体の浸透ぬれ、特に過渡特性を研究してきた。本年度は概ね予定通りに進捗した。当初の計画に従って、以下にその概要を述べる。 1.試作装置の完成 昨年度試作した装置の改良、特に本装置のセンサー部、液送部、検出部を中心に改良改質を重さねて、精度よく満足に測定できるようになった。まず電極は本装置の心臓部であり、エネルギーの質を変換する部分であるため、数多くの試作テストを繰り返し、感度、耐久性、取扱い易さなどを中心に改良し、最終段階のもので精度、耐久性共によくなった。 液送部も、これまでのものは電極系の微妙な振動を拾うので、無振動の加圧空気による液送方式とした。 さらに検出部の強化、操作性を中心に改良を加え、過渡測定が容易になってきた。以上の結果、繊維試料の測定は精度と分解能が向上した。 2.基礎研究 昨年度検討したWashburn式、Szekely式に、今年はLevine式の数値解析プログラムを作成し、三者の毛管浸透ぬれ理論と試作実験装置を用いて測定した繊維集合体の毛管浸透の結果を比較検討した。 まず布や、毛細管を用いた実験結果にはLevinやWashburnの理論、特に過渡期については適用できないことがわかった。Szekely式について検討したところ、エチルアルコールや水の浸透の過渡期のデーターは極めて理論曲線とよく一致し、繊維集合体の毛管浸透に有効な繊維間隙を数μmのオーダーで決定でき、さらに過渡期における絡種繊維に対するアルコールの接触角や水の接触角を決定することができた。
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