研究課題/領域番号 |
62890006
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮本 武明 京都大学, 化学研究所, 教授 (60027050)
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研究分担者 |
稲垣 博 京都大学, 名誉教授 (40027008)
鈴木 秀松 京都大学, 化学研究所, 助教授 (00027054)
林 寿郎 京都大学, 医用高分子研究センター, 助教授 (90026089)
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キーワード | セルロ-ス透析膜 / 血液透析膜 / ポリイオンコンプレックス / 血液適合性 / 補体活性 / 化学修飾反応 |
研究概要 |
本研究の目的は、血液浄化膜として再生セルロ-ス膜が多用されていること及びセルロ-スの反応性に着目して、市販セルロ-ス透析膜表面に血液適合性に優れたポリイオン錯体(PIC)を固定化し、透析性能、機械的強度低下をもたらすことなく、血液適合性(抗血栓性並びに低補体活性化作用)を賦与した人工透析膜を開発するための基礎デ-タを集積することにある。昭和62年度は血液浄化用セルロ-ス膜である市販キュプロファン平膜を用いて実験を行い、63年度はその成果を市販中空糸膜に応用し、実用化のための基礎的研究を行ったが、本年度は本試験研究の最終年度であるため、これまでの成果を再評価すると同時に、実際にPIC固定化セルロ-ス透析膜を試作し、血液浄化膜としての性能を検討した。得られた成果は下記の通りである。 1.再生セルロ-ス中空糸膜表面のカチオン化剤としてグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド(GTMAC)は非常に有用である。 2.PIC形成用のアニオン成分として、カルボキシメチルセルロ-ス及び硫酸セルロ-ス、いずれも効果的である。 3.PIC固定化再生セルロ-ス膜の補体活性化は、生体適合性に優れた透析膜として最近開発されたHemophanとほぼ同程度まで減少する。 4.抗血栓性は良好である。 5.本研究で確立したカチオン化処理並びにPIC固定化処理による膜の透析性能並びに機械的強度低下は軽微である。 以上の結果により本研究の有用性は確認されたが、結果のばらつきが大きく、実用化に十分な結果はまだ得られていない。しかし、これは原理的な問題ではなく、すべての中空糸膜内壁を均一にカチオン化、PIC化する技術的な問題であり、今後鋭意検討すれば解決されるものと確信している。
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