研究課題/領域番号 |
63010023
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
永井 克孝 東京大学, 医学部, 教授 (80072974)
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研究分担者 |
松本 亮 静岡県立大学, 薬学部, 名誉教授 (70046241)
内貴 正治 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (10020752)
谷口 克 千葉大学, 医学部, 教授 (80110310)
千谷 晃一 藤田学園保健衛生大学, 医学部, 教授 (60179942)
広橋 説雄 国立がんセンター, 研究所・病理, 室長 (70129625)
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キーワード | 癌胎児性糖鎖 / モノクローナル抗体による血清診断 / シアリルLe^a / 黒色腫関連糖鎖 / 大腸菌線毛蛋白質 |
研究概要 |
各種癌細胞や癌組織に対する単クローン抗体の作成を積極的に進め、癌診断や治療に有用な抗体のみならず、細胞の分化や増殖の解析と制御にも役立つ抗体を多数樹立するのに成功した。癌患者癌組織近傍リンパ節のリンパ球から樹立したモノクローナル抗体HMST-1は当該患者癌細胞を選択的に検出し、正常細胞とは全く反応しない。この構文構造はラクト系列タイプI鎖であり、ヒト胎児組織と癌組織に特に高濃度に含有される典型的な癌胎児性抗原であることが明らかになった。また、NCC-ST-439はシアル酸残基をエピトープ構造に含むが、シアリルLe^aとシアリルLe^x には全く反応しない新しい構造を認識する抗体であり、癌と非癌の区別に非常に有効であった。同様にシアリルLe^a 構造と反応する抗体であるが、NS19-9以上に幅広く癌関連糖鎖を検出する抗体としMSW113、NCC-ST-272、PA8-15、IM-3を新たに樹立した。これらの抗体は癌の血清診断に著効を示し、特に膵癌はほぼ100%の検出感度を示す他、胃、結腸、直腸癌の血清診断にも、従来の診断用モノクローナル抗体以上の検出感度を示した。一方、黒色腫と反応するモノクローナル抗体M2590は各種動物の黒色腫と反応する特徴を有しているが、その抗原はGM3であり、特にGM3ラクトンと強い親和性を有していることが明らかになった。また、シアル酸2-6ガラクトース構造を認識するモノクローナル抗体MSG-15はヒト肝癌の診断に非常に有用であって、この構造自体は正常肝では1%程度の発現を示すにすぎないのが肝癌全例に増量しており、その濃度増加は13-31%に達していた。一方、病原性大腸菌の線毛蛋白質は哺乳類細胞の各種構造と反応する性質を示すが、なかでもK99抗原性はN-グリコリルノイラミン酸を含むGM3にあって癌診断に非常に有用であることが明らかになったことは大きな成果であり、モノクローナル抗体に代替され得る糖鎖認識蛋白質の開発に道が開かれたと言える。
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