研究概要 |
1.癌遺伝子あるいは癌関連遺伝子のマッピング:v-fpsをプローブとしてヒトDNAより分離したeph遺伝子はレセプター型チロシンキナーゼをコードし、他のsrcファミリーがん遺伝子との相同性がないことから新たながん遺伝子であることがわかった。この遺伝子はラットの肝臓、肺臓、腎臓および精巣で発現しており、また、ヒトの癌では上皮性由来の癌で顕著な発現がみられ、なかでも肝癌、肺癌では過剰発現がみられた。これらのことより、eph遺伝子は上皮性細胞の増殖に関与した遺伝子ではないかと考えられる。この遺伝子は第7染色体上に位置しその座位は7q31→q36であることが分かった。また、リンホカイネンの一種であるIL5をin situ分子雑種法によりヒト5q23.3→q31.1に位置付けした。第5染色体上のこの部位にはIL3,IL4,CSF,EGR1などの遺伝子が存在し、これら細胞増殖関連遺伝子がクラスターをなしていることが分かった。この部位は種々の白血病の染色体異常の切断点でもあり、増殖関連遺伝子と白血病発生との関連性が示唆される。 2.造血系腫瘍の染色体異常:CMLの変異型ph^1転座の形成機構について分析した。従来、第9染色体が含まないと考えられてい変異型ph^1は全て9qのab1がph^1へ転座しており、さらにab1はbcrと融合していた。すなわち、変異型は標準型より段階を経て複雑型へと移行したものと考えられた。AML-M5aおよび悪性貧血症において3q21、11p11上に新たなfragile siteをみいだした。また、AML-M4またはM5に特異的異常と思われるt(8;16)を見出した。 3.固形腫瘍の染色体異常:胞巣横筋肉腫に特異的異常として、t(2;13)を、滑膜肉腫ではt(X;18)(p11;q11)を見出した。このX染色体転座においては正常Xが後期複製パターンを示したことより、転座Xが活性化しているものと思われた。
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