研究概要 |
1.細胞増殖制御のシグナル伝達機構においてカルシウムイオンの果たす役割を、Cキナーゼ活性化を介して作用する典型的な増殖因子bombesinをモデルとして解析した。Bombesinの増殖促進効果は細胞外からのCa^2^+流入の程度に厳密に規定され、この効果は特に細胞周期のG_1早期に顕著に認められる。この現象の細胞内分子機構を解析した結果、Ca^2^+流入はホスホリパーゼC活性化の程度は変えずにCキナーゼ活性化の段階を直接制御することにより増殖制御系に密接に関与していることが明らかとなった。 2.Insulin,epidermal growth factor等受容体チロシンキナーゼ活性化をおこす増殖因子は、Cキナーゼ活性化をひきおこす増殖因子と同時に作用させたときホスホリパーゼC活性化より後のステップでCキナーゼ活性化を増強することが、ジアシルグリセロール絶対定量、蛋白リン酸化の二次元電気泳動法による解析、細胞内遊離Ca^2^+濃度測定等の方法により明らかとなった。これは、異なる増殖因子間に生ずる協同相乗作用のメカニズムの1つと考えられる。 3.Bombesinがautocrine growth factorとして作用していると提唱されている肺小細胞癌について、すでに患者組織より樹立された数株の細胞を用いて検討を加えた。6株のうち3株に外から添加したbombesinに反応して細胞内遊離カルシウム濃度の上昇が認められた。しかしこれらはいずれもbombesinによりDNA合成は促進されず、またbombesin antagonist(subslance P analogue)はbombesinによる細胞内Ca^2^+動員を完全にブロックするにも拘らずDNA合成には何ら影響を与えなかった。以上の所見は、少なくともこれらの肺小細胞癌においてはbombesinを産生していてもautocrine growth factorとしては作用していないことを示唆する。なお、これらの細胞はいずれもsubstance P,neurokinin A,B等のtachykininに反応し て細胞内Ca^2^+動員を示した。
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