研究概要 |
腫瘍細胞における蛋白質リン酸化反応の制御機構について解析を進めた。鶏胎児線維芽細胞をレトロウイルスでトランスフォームして得られたP130^<fps>とP60^<src>はいづれもチロシンキナーゼ活性を有し、いづれもP36と呼ばれる蛋白質をリン酸化する。カルシウム結合蛋質S-100及びカルモデュリンはこの2つのキナーゼ活性を抑制する事を見い出し、腫瘍細胞におけるチロシンリン酸化活性の制御機構の1つにカルシウム結合蛋白質カルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素との連関を調べるため2つの新しいタイプの阻害剤を合成、発見した。1つはML-9でありカルモデュリン依存性ミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)のATP結合部位に作用して活性を阻害する薬物であり、一方はサイロキシン(T_4)でこれはMLCKのカルモデュリン結合部位に作用する。2つの阻害剤はいづれもin vivo,in vitroにおいてミオシン軽鎖のリン酸化を選択的に抑制し、サイロキシンアクィニティークロマトグラフィーにより簡便にMLCKが分離・精製される事を見い出した。またML-9はPDGF刺激によるDNA合成を低濃度で抑制し、細胞増殖へのミオシン軽鎖キナーゼの関与を示唆した。しかし今年度の計画にあった細胞周期を同調させた培養細胞におけるカルモデュリン依存性蛋白質リン酸化酵素の各周期における役割等は今後の課題として残されたが、ML-9の培養細胞における有用性が示され、サイロキシンアフィニティクロマトグラフィー法の確立等今後の課題に取り組むための手段・方法の有効性は充分に示された。
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