研究概要 |
1.コラーゲンに結合能を持つ熱ショック蛋白質hsp47が,ニワトリ胎児線維芽細胞の系で、ラウス肉腫ウイルスによるトランスフォーメーションに感受性を示すことを報告してきたが、本年度はこの現象が他の系でも認められる事を明らかにした。 Balb/3T3細胞をSV40ウイルスによって、NIH/3T3細胞を発癌遺伝子である活性型Ha-ras遺伝子によって、それぞれトランスフォームさせた。これらの細胞と、コントロールである親細胞を^<35>S-メチオニンでラベルした後、NP40可溶画分を抽出し、NEPHGE/SDS-PAGEによる二次元電気泳動、或いは、ゼラチンセファロースで純化した後、SDS-PAGEによる一次元電気泳動によって解析した。トランスフォームした細胞では、いずれの場合も、ニワトリ胎児線維芽細胞の場合と同様hsp47がコントロール細胞の約1/3に減少し、hsp47のトランスフォーム感受性がニワトリ胎児線維芽細胞特異的でない事を明らかにした。 2.ニワトリ胎児線維芽細胞、Balb/3T3細胞を^<35>S-メチオニンでラベルし、抗hsp47抗体を用いて免疫沈降を行ったところ、TypeIコラーゲンが共沈されてきた。これは、いずれの細胞でも細胞内でhsp47とTypeIコラーゲンが相互作用を持つ事を示したもので、in vitroだけでなく、in vivoにおけるhsp47とコラーゲンの相互作用を明らかにしたものである。 3.ニワトリ胎児線維芽細胞およびBalb/3T3細胞に熱ショックを与え、抗hsp47抗体で染めると、その蛍光顕微鏡像が、網目状の構造から粗い粒状の構造に変化する。これまで、免疫電顕等を用いてhsp47が小胞体に存在することを明らかにしてきたが、熱ショックにより小胞体は傷害を受け、本来の網目状の構造を消失し粗い粒状の構造をとるものの、hsp47の局在は相変わらず小胞体にあることを示唆するものである。
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