ラットにマヒを誘発するPVC441ウイルスをNFS、BALB/c、DBA/2、C57Bl/6マウスの新生児に接種した。NFSマウスは離乳期頃より振戦またはマヒ症状を示すが、他3系統は症状を示さず抵抗性を示した。NFSを中心にして他3系統のマウスと遺伝子的交配を行い症状の発現を調べたところ、DBA/2に単一遺伝子仮設に合致する優性の抵抗性遺伝子が存在することが示唆された。他方マウス体内でのウイルス増殖を調べてみると、C57Bl/6マウスにのみウイルス増殖を制御する劣性の抵抗性遺伝子の存在が示唆された。組織病理学的検索の結果、NFSとBALB/cの脊髄に空胞性の変性像が観察され、DBA/2とC57Bl/6マウスには観察されなかった。以上の結果から、BALB/cマウスの抵抗性については今のところ解釈できないが、少くとも2種類の抵抗性遺伝子が存在することが明らかになった。現在DBA/2マウスの抵抗性遺伝子をNFSマウスに導入する作業(コンジェニックマウスの作成)に着手している。またC57Bl/6マウスの抵抗性遺伝子が単一遺伝子仮設に合致するか否かの実験を進めている。他方バーティカルローターの購入によって遅れているPVCウイルスゲノム解析の技術的基盤が確立されつつある。
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