研究概要 |
われわれは、腫瘍の拒絶,退縮に働く免疫学的エフェクター細胞の主役の一つが腫瘍に対するキラーT細胞(CTL)であることを明らかにしてきた。この事実を基に、担癌生体より得たリンパ球を,in vitroで、現在担っている腫瘍細胞で刺激培養することによって自己由来の腫瘍に対するCTLを特異的に活性化する新しい方法を開発した。この方法を用いて、ヒトの担癌生体に現在担っている腫瘍に対する自己のCTLをin vitroで誘導活性化し、再び担癌生体に戻し移入する癌に対するCTLの療法を原型を確立した。われわがヒトの癌免疫療法として新しく開発したCTL療法は、まず癌患者より現在担っている腫瘍細胞を外科的に切除した癌組織や癌性胸水あるいは腹水から採取し、一次培養で増殖させる。次に同一患者の末梢リンパ球(PBL)にマイトマイシンCで処理した自己腫瘍細胞を一定の比率で加え7日間PBLを刺激培養する。培養開始3日目にインターロイキン2(IL-2)を少量(TGP-3、1〜2U/ml)加え、培養開始7日後に自己腫瘍に対するCTLが誘導活性化されているか否かを^<51>Cr標識的腫瘍細胞に対する細胞障害試験で確認する。この際、抗原刺激によって細胞障害活性が誘導され、IL-2を加えることによってその活性が増強されるとき、CTL療法が有効になることが明らかになった。誘導されたCTLは主にCD3、CD8陽性のT細胞であり、HLA classIに拘束性であることを明らかにした。特に、他の癌治療に抵抗性を示した皮下肉腫である類上皮細胞肉腫例においてCTL療法を施行した結果、CTLの活性の上昇とともに腫瘍の退縮を見、退縮中の生検の結果、癌組織中に小リンパ球の強い浸潤が見られ、免疫組織学的に浸潤リンパ球がCD3^+、CD8^+T細胞が支配的で、T細胞抗原受容体は大方TcRαβ鎖を持っていた。この事実は特異的CTLが腫瘍の退縮に直接働いている証拠を世界に初めて示したものである。
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