Bリンパ腫瘍細胞に特異的に発現されている遺伝子の構造、機能及び腫瘍細胞に於ける役割を明らかにしてゆく為に、B細胞特異的cDNAライブラリーを作成した。このライブラリーが非常に有用であることは、現在まで、新しい免疫グロブリン遺伝子R_5(1986年)と、B細胞特異的(mb-1)遺伝子(1988年)が、このライブラリーから発見されていることからも証明されている。現在このライブラリーから単離され、保存されている他のクローンについても解析を進めている。また、最近単離したDNA、mb-1遺伝子がB細胞分化や分裂に於て重要な役割を果たしているらしいことが明らかになり、この遺伝子のコードするタンパク質の研究を推し進めている。この結果このmb-1タンパクは分子量34KDのB細胞腫瘍及び、正常活性化B細胞に特異的に発現される膜糖タンパクであり、lg-1レセプターと結合する性質のあることが示された(今年度の研究)。特に正常B細胞ではごく微量に存在するmb-1 mRNAが、リポポリサッカライド等のB細胞マイトジェンで活性化し、その分裂・細胞増殖を促したBブラスト細胞では著しくそのmRNAが増加することから、このmb-1遺伝子産物と、B細胞の活性化や分裂と非常に密接な関連があることが示唆された。本研究の初年度として、このmb-1タンパクに対するモノクローナル抗体、及び特異的抗体(アフィニティー精製)の作成を行い、今後これらを用いてこのタンパクの詳細な解析やB細胞でのシグナル伝達に果たす役割を明らかにする研究を進める。 更に、このmb-1遺伝子の腫瘍細胞での発現や機能を解明して行く為の第1段階として、マウス染色体遺伝子の単離が必須である。Balbycマウスコスミッドライブラリーからmb-1遺伝子クローンを単離し、その染色体遺伝子の構成を解析中である。
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