本研究はチロシンキナーゼ活性をもつ細胞増殖因子レセプターの1つとしてインスリンレセプターをとりあげ、新しい方法によりチロシンキナーゼの基質を見出し、細胞増殖シグナルの伝達機構を明らかにすることにより、発癌機構の解明に寄与することを目的とする。インスリンレセプターはインスリンが結合するαサブユニットと、それにより活性化されるチロシンキナーゼドメインをもつβサブユニットよりなる。このβサブユニットのみではチロシンキナーゼが常に活性化されているので、インスリンレセプターcDNAからαサブユニット部位をとりのぞき、βサブユニットのみを大量に発現しているクローンを現在選択中である。またコントロールとして、チロシンキナーゼ1030番目のリジン(ATP結合部位)をメチオニンに変えてチロシンキナーゼ活性を失ったcDNAのβサブユニットを発現させそれを安定かつ大量に発現しているクローンも選択中である。この2つのクローンよりβサブユニットを精製し、λgtIIの発現ライブラリーの系でこのチロシンキナーゼの特異的基質となるcDNAクローンを選択する。そしてその一次構造を決定したい。
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