細胞の癌化に伴って糖タンパクや糖脂質の糖鎖構造に変化が生ずる。本研究では糖脂質糖鎖構造に対する単クローン抗体を作製し、これを用いて糖転移酵素活性を測定し、癌細胞の検出および血清診断に応用する目的で実験を進めた。糖転移酵素活性の測定方法として次の3つの方法を検討した。 1.固相化した糖脂質あるいは糖タンパクを酵素およびヌクレオチド糖と共に反応させ、生じた生成物をELISAによって測定する。 2.液相で糖転移酵素反応を行った後、生成物をマイクロプレートに固相化し、生成物をELISAによって測定する 3.液相で酵素反応を行った後、単クローン抗体を結合させたビーズに生成物を結合させ^<125>I-単クローン抗体を用いRIAによって酵素反応生成物の量を測定する。 酵素としては牛のミルクのβ-ガラクトース転移酵素、単クローン抗体としてGalβ1-4GlcNACβ-を認識するH-11を用いた。H-11を用いたELISA法およびRIA法によってGalβ1-4GlcNACβを有する分子は0.7〜30pmolの間で測定できることが明らかとなった。 上記した2および3の方法で糖タンパクおよび糖脂質をアクセプターとして測定できることが明らかとなった。またこの測定の為の条件を明らかにすることができた。1の方法については他の2つの方法に比較し酵素活性が低く測定された。このことは基質を固相化した為、酵素との反応性が低下している為と思われる。 以上の結果はこれまで複雑であった糖転移酵素活性の測定法を容易にすると共に一度に多くのサンプルを処理できる利点をもっている。今後、血清や腹水のサンプルについて測定し癌との相関を明らかにしてゆく予定である。
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