Adherens Junctionと呼ばれる細胞接着装置では、よく発達した細胞膜裏打ち構造を介してアクチンフィラメントがそのbarbed end で細胞膜に結合している。この裏打ち構造にはpp60^<src>が局在することが知られている。我々は、世界で初めて、ラット肝臓を利用して細胞間Adherens Junction(以下AJ)を大量に単離することに成功した。本年度は、この単離AJからpp60^<src>チロシンキナーゼのターゲットを同定する前に、まずAJ裏打ち構造の分子構築を明らかにすることを目標とした。単離AJの裏打ち構造をSDS電気泳動法により調べてみると、主に10種類の蛋白質よりなることが分かった。その分子量は大きい方から400kd、240kd、235kd、130kd、100kd、82kd、70kd、55kd、50kd、43kdであった。このうち130kdはビンキュリン、100kdはα-アクチニン、43kdはアクチンであった。また55kd、50kdはケラチンの一種であることも分かった。そこでまず82kd蛋白質を単離精製し、その性質を調べたところ、興味深いことに、この蛋白質はアクチンフィラメントのbarbed endに特異的に結合することが分かった。また特異的な抗体を作製し、その分布を調べたところ、細胞間AJの裏打ち構造に局在していた。この新しい蛋白質を我々はradixinと命名した。次に、最も分子量の大きい400kd蛋白質を精製し、特異的なモノクローナル抗体を作製した。この蛋白質は長さ400mmの紐状の分子形態を示し、AJの裏打ち構造のみならず、そこから生え出しているアクチンフィラメント束(例えばストレスファイバー)にも分布していた。さらに70kd蛋白質についても同様な分析を行い、AJ裏打ち構造の分子構築が次第に、に明らかになってきた。今後これらの分子構築に関するデータをもとに、pp60^<src>のターゲット蛋白質の検索、およびチロシンリン酸化の意義の追究を行っていく予定である。
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