研究課題/領域番号 |
63015111
|
研究機関 | 愛知県がんセンター |
研究代表者 |
小幡 裕一 愛知県がんセンター研究所, 免疫学部, 室長 (30177290)
|
研究分担者 |
浜島 紀之 愛知県がんセンター, 研究所・免疫学部, 研究員 (40132922)
高橋 利忠 愛知県がんセンター, 研究所・免疫学部, 部長 (00124529)
|
キーワード | 腫瘍特異抗原 / 分化抗原 / マウスTL(胸腺白血病)抗原 / 発現制御機構 / 遺伝子導入マウス / 胸腺分化異常 / T細胞型白血病 |
研究概要 |
細胞の癌化・分化に伴なう遺伝子の発現機序を解明する目的で、腫瘍特異抗原と分化抗原の両性格を持つマウスTL(胸腺白血病)抗原をモデルとして、細胞並びに個体レベルで解析を行った。細胞レベルでの解析により、TL遺伝子の発現を制御する配列のほとんどは5′側上流約350塩基の領域内に存在することが明らかになった。 遺伝子導入マウスを作出し個体レベルでの解析も行った。正常胸腺で発現するTL遺伝子(Tla^a-3)、正常では発現せず白血病細胞においてのみ発現するTL遺伝子(T3^b)、分化に規定されず発現するH-2K^b遺伝子、並びにT3^bとH-2K^bの5′側調節領域を交換した2種のキメラ遺伝子、以上の5種の遺伝子を導入したマウス12系統を作出した。各導入遺伝子の発現を検索することにより、以下の結論が得られた。(1)Tla^a-3の導入に用いたDNA断片には、胸腺T細胞特異的発現を決定する配列が存在し機能する。(2)導入宿主に用いたC3H/HeのTL陰性の胸腺細胞にもTla_a-3の発現に必要な条件は備わっており、TL陰性胸腺にTla^a-3の発現を抑えるtransに働く因子は存在しない。(3)T3^b及びC3H/Heに内在するTL遺伝子が発現しないのは、遺伝子自体、もしくはTL遺伝子にcisに働く転写因子の性質に由来する。(4)個体レベルのTL並びにH-2K^b遺伝子の発現調節も、両遺伝子の5′側上流に存在する配列によって決定されている。さらに、大量のTL抗原を胸腺に発現しているTl_a^a-3導入マウスの1系で、胸腺が萎縮し、L3T4^-/Lyt2^-の未熟T細胞の表面抗原発現型をもつ大型の細胞が胸腺の大部分を占める分化異常が観察された。またこの系統の50%以上のマウスは、8〜10月齢でL3T4^-/Lyt2^-の表現型を持つ移植可能なT細胞型白血病を発症した。このマウス系統は、TL抗原の機能の解明のためだけでなく、胸腺T細胞の分化機序、さらに白血病の発生機序を理解するためにも有用な系になると考えられた。
|