研究分担者 |
WATANABE Tom ブリッティシュコロンビア大学, 教授
BREKKE A. トロムゼ大学, 教授
SANDHOLT P.E オスロ大学, 助教授
MCEWEN D.J. サスカチュワーン大学, 教授
EQEIAND A. オスロ大学, 教授
斎藤 尚生 東北大学, 理学部, 助教授 (80004315)
巻田 和男 拓殖大学, 工学部, 教授 (40129945)
西野 正徳 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (70023679)
湯元 清文 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教授 (20125686)
田中 義人 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (30023675)
岩上 直幹 東京大学, 理学部, 助教授 (30143374)
山本 達人 東京大学, 理学部, 助手 (90182633)
林 幹治 東京大学, 理学部, 助教授 (60011730)
小口 高 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (40011457)
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研究概要 |
目的 複雑に変化するオ-ロラの動態を解明するため、1989年2月に打ち上げられた準極軌道衛星「あけぼの」との呼応観測に重点を置いて広域多点観測の実施。 観測の経過 [観測地点・観測期間]「あけぼの」衛星の遠地点が北半球の上空にきた、1989年12月末から1990年2月を観測の重点期間とした。超高感度オ-ロラTVカメラを備えた日本からの派遣研究者が観測を担当する主要観測点は7点設置した。このうち4点は、カナダ北部のほぼオ-ロラオ-ヴァルに沿う、Great Whale River,Schefferville,Fort Nelson,Goose Bayである。 また、アラスカ大学、サスカチュワン大学、ノルウェ-のトロムゼ大学の協力により、アラスカのPoker Flat、カナダの中央部のRabbit Lake、LaRongeとParkesite、ノルウェ-北部にあるトロムゼ大学のSkibotn観測所の各地点と極冠域のグリ-ンランドのGodhavn及びスバルバ-ドのNy Alesundを主要観測点とした。 主要観測地点では長周期及び短周期(ULF)磁力計による同時記録を取得した。 この他、自動化されたULF誘導磁力計を24点カナダ・アラスカ北部を中心に設置した。テ-プ交換、デ-タ郵送に気象観測所など現地の協力を得て約半数の地点では半年近く継続してデ-タを取得することが出来た。 [衛星・地上観測]衛星観測と地上観測の連携による同時観測デ-タ取得の重要性はこれまで繰り返し指摘されてきたが、磁気圏空間の衛星点が磁力線対応により地上の観測地点の視野範囲に含まれる確率は小さく、限られた事例が断片的に報告されるに過ぎなかった。今回の観測地点は経度方向には衛星周回周期(3.5時間)を考慮した広い経度域に配置した。 しかし、計画立案時の半年以上前に衛星軌道の正確な予測は困難で、軌道軌跡が観測地点の視野に入るか否かは多分に偶然的要素に依存した。好運にも、Great Whale River Skibotn,Fort Nelsonの3観測地点の全天TVカメラの視野を殆ど毎晩衛星軌道が横切ることとなった。天候、オ-ロラの活動度等の条件を付けても30軌道の地上・衛星の呼応観測デ-タが得られ、多点観測の有効性を示す結果となった。 [観測デ-タと処理] 太陽活動最盛期の時期としては例外的に擾乱の小さい期間であったためか、オ-ロラの発生パタ-ンと付随する磁場擾乱の形態について、真夜中付近の脈動性オ-ロラの多発、正の磁場湾形変化が相対的に目立つなど特異な点が見られた。 得られた観測資料は膨大(ビデオテ-プ500巻、カセットテ-プ500巻)で、一次処理オ-ロラデ-タの子面輝度変化プロットの作成にほぼ一年を要した。DC磁場デ-タは1秒値デ-タを光ディスクにファイル化し、午1分値プロットによる速報資料は比較的早い時期に関係者に配布することができた。誘導磁力計デ-タは偏波、パワ-、主軸の各ダイナミックスペクトル表現による一次処理を進めつつある。 [ワ-クショップ] 最終年の1991年9月に、整理した観測資料の比較、研究成果の取りまとめ、共同研究の推進のため、国外の分担者を招聘し、ワ-クショップを開催した。「あけぼの」観測担当者とも連絡をとり、「あけぼの」衛星デ-タと地上で得られたデ-タの比較に焦点を当てた討論を行った。カナダのCANOPUS及びヨ-ロッパEISCAT観測デ-タの取得状況との対比を行った。 成果 現在までに明らかとなった点は、(1)衛星・地上呼応観測を本格的に地進める上観測点網のグロ-バルかつ密な配置が予想通り有効であること、(2)高度の衛星観測粒子デ-タと衛星軌道に沿ったオ-ロラの輝度分布を比較することにより的1keV以上のピッチ角の小さい降下電子とは概略対応が見られるがオ-ロラのタイプ、緯度帯により半定量な説明が簡単に困難な例が多く、衛星高度以下での加速電場の寄与を示すと考えられる。(3)地上で脈動性オ-ロラが観測されるときオ-ロラ発光の起源となる1keV以上の降下電子以外に100eV程度のエネルギ-の低い降下電子束が付随することが示された。現在のところこの低エネルギ-電子が脈動性オ-ロラの発生に本質的な役割を演じているのか二次的な効果なのか解明されていないが、磁気圏赤道域を発生源と見なしたモデルの中ではこれまで言及されていない現象である。
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