研究課題/領域番号 |
63041047
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西田 隆雄 東京大学, 農学部, 教授 (20023426)
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研究分担者 |
並河 鷹夫 名古屋大学, 農学部, 助教授 (70111838)
天野 卓 東京農業大学, 農学部, 助教授 (90078147)
庄武 孝義 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (00003103)
山本 義雄 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (10032103)
田中 一栄 東京農業大学, 農学部, 教授 (10078107)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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キーワード | ネパ-ル在来家畜 / 遺伝子構成 / 血液蛋白質 / イノシシ / ヤケイ |
研究概要 |
ネパ-ルにおける家畜の成立過程を明らかにするために、在来家畜およびそれらの野生原種の調査を、1988年度(1988年10月21日ー1989年1月18日)および1989年度(1989年11月9日ー1990年1月15日)の両年度にわたって行い、以下の成績をえた。 1.ソル・クンブ、マカル地域、カリガンダキ流域およびタライ地域で、ヤク、ウシおよびそれらの雑種の血液を採取し、血液蛋白質の遺伝的変異を検討した結果、ヤクの遺伝的変異は非常に低く、Lulu型在来牛がこれに次ぎ、ウシとヤクの雑種が最も高い変異性を示した。 2.ネパ-ル在来水牛は、東南アジアのそれと、遺伝的変異性が明らかに異なり、南アジアのものに類似する。特にタライの水牛は西バングラデシュ、スリランカのものと高い類似性を示している。 3.在来羊全4品種のうち、Baruwal、Kagi、LampchhreはBhyanglung(チベット羊)とは異なり、互いに高い類縁関係を示し、Lampchhreはインド系羊種に属することが明らかにされた。 4.在来豚の血液蛋白質型を分析したところ、その遺伝子構成は東南アジア系在来豚とは異なり、むしろバングラデシュの在来豚と同じ特徴を示した。特にAf^C遺伝子型が在来豚より高頻度で出現したことは注目すべきことである。またネパ-ル国内の集団間の遺伝的変異性は、一般に低い傾向にあった。 5.アジア系在来豚の野生原種の一つと考えられるインドイノシシ(Sus scrofa cristaus)3個体の血液蛋白質型の分析を行った結果、アジア系在来豚の典型的な変異遺伝子が、ネパ-ル産インドイノシシにも存在することが判明した。 6.在来鶏の血液蛋白質の変異性についても、バングラデシュとスリランカ在来鶏との類縁関係を示し、ヘモグロビン遺伝子座について、カリガンダキ流域の集団に、明瞭な遺伝的変異性が認められた。 外形質を支配する遺伝子の頻度を見ると、eとid遺伝子について、ソル・クンブ地域がタライ地域よりも格段に高いという、明らかな地理的勾配がみられた。なお卵白の調査において、東ネパ-ル(ビラトナガ-ル)で、リボフラビン欠損例の存在することが確認された。 7.ネパ-ルの赤色野鶏は、形態学的にGallus gallus murghiと同定される。 また血液蛋白質型からも本亜種と他のアジアの赤色野鶏との間に、明らかに差がみられた。生態学的聞き取り調査によって、在来鶏と野鶏との間に交雑の行われている可能性が示され、また聞き取りと採集個体の剖検とによって、季節的繁殖性の存在することが明らかにされた。 8.ランタンとマカル地方のヤクの飼養管理状況を調査した、シェルパ族が所有するヤクは夏期には標高4,000ー5,000mのイネ科植物の優占する草原に放牧されるが、冬期には標高2,500ー3,000mの森林地帯に移動し、広葉樹や竹類の茎葉を、主に採食するという明瞭な季節的差のあることが判明した。
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