研究課題/領域番号 |
63041059
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
佐々木 達夫 金沢大学, 文学部, 助教授 (60111754)
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研究分担者 |
成田 滋彦 青森県埋蔵文化財調査センター, 調査第三課, 総括主査
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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キーワード | 東西文化交渉 / 陶磁の道 / 海のシルクロ-ド / 海上貿易 / 中国陶磁器 / 港湾都市遺跡 / インド洋貿易 / ペルシアの陶器 |
研究概要 |
大量の物資を安価に運ぶことができる海上交通路の利用は、中世に盛んとなる。多くの物資はすでに腐食し使用され残らないが、陶磁器は腐らないため遺跡に残る。遺跡に散在する陶磁器からは、文献資料では知ることが困難な具体的な貿易量まで推定できる。東西海上貿易の実態を、具体的な考古学資料から復元することが可能となる。インド洋西域(アラビア海)沿岸の遺跡から発見される中国陶磁器の種類や器種、量、生産地、年代などを調べることによって、中世の中国と西アジア・アフリカとの海上貿易の実態と変遷を明らかにし、同時に出土する多くのイスラム陶器との比較研究によって、中国陶磁器が西方世界に及ぼした技術的な影響の程度を研究したい。中世の東西世界の結びつきを、考古学資料で描きだすことが本研究の目的である。 研究計画の円滑な遂行を目的として、昭和62年度に予備調査を行って準備した。昭和63年度には、アラブ首長国連邦のジュルファ遺跡、バ-レ-ン国のアリ遺跡の発掘調査を行い、平成元年度にも同じ遺跡の第二次発掘調査を行った。 ジュルファ遺跡はアラビア湾に面する中世の港町遺跡である。ホルムズ海峡に近い、アラビア湾の入り口部に立地し、メソポタミアおよびアラビア半島とインド・東南アジアとを結ぶ中継貿易港遺跡であった。昭和63年度にはメイン・トレンチを掘り、遺跡の堆積状況をとらえ、そのうちの第一層から第三層までを層位的に広げて発掘した。続く平成元年度には同じ場所を掘り下げ、第四層、第五層、第六層の三層を発掘した。これによって、14世紀から16世紀の建物跡、カマド、円形穴などの生活跡を発見した。この地方に独特と思える掘立柱跡が並ぶ建物、アラブ独特の建築様式の中庭を中心とした道路で囲まれた建物などの生活跡、ペルシアや中国から運ばれた陶磁器、ガラス、現地産が多い彩文土器や無文土器など、大量の生活用具の破片が出土した。層位的な違い、すなわち時代的な違いが明確になり、貿易圏の時代的変遷をたどる資料を得ることができた。 アリ遺跡はアラビア湾に浮かぶバ-レ-ン島の中央部にあるイスラ-ム時代初期の町跡である。昨年度の発掘場所と70メ-トル離れた同じ遺跡内を発掘し、9ー10世紀の石積み壁の建物跡と、アラビア湾を運ばれた貿易品、とくにイラクと中国の陶磁器、かなりの数量のガラス、青銅製品、土器片を発見した。 アラビア湾の二個所の遺跡発掘により、メソポタミアと東南アジア・中国との海上貿易が盛んになり始めた9世紀の実態、および中国陶磁器が大量に西方世界に運ばれた14世紀から16世紀の実態を示す出土品を資料化した。当初の目的にそう研究資料を層位的に入手し、研究成果をあげることができた。 しかし、なお、調査した遺跡は広大であり、未調査部分がまだ多く残る。現地政府は遺跡を保存し、継続的調査を許可している。さらに資料を増加させ、現地の国立博物館内に残してきた資料を整理・研究することが必要である。
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