研究課題/領域番号 |
63041061
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大参 義一 信州大学, 人文学部, 教授 (00022351)
|
研究分担者 |
WANDIBBA Sim ケニア国立博物館, 考古課, 課長
MASAO Fideli タンザニア国立博物館, 館長
織笠 昭 東海大学, 文学部, 講師 (90194646)
佐々木 明 信州大学, 人文学部, 助教授 (00111782)
酒井 潤一 信州大学, 理学部, 助教授 (30020663)
|
研究期間 (年度) |
1988 – 1990
|
キーワード | 旧石器文化 / ケニア(海岸部) / タンザニア(中南部) / イシミラ遺跡 / 両面加工石器 / ルバロア技法 / 細石器 / 岩面絵画 |
研究概要 |
本調査研究の窮極的な目的は東・東北アフリカの赤道地溝帯で成立した旧石器文化の周辺地域への拡散と周辺地域での旧石器文化の展開過程の解明にある。今年度の調査研究では、ケニア・タンザニア両国の旧石器文化の展開過程と古環境との関連の全体像を確実に理解することを当面の目標としている。この研究目標に関して二・三の新しい知見・成果がえられた。 1.タンザニア連合共和国での調査の成果は次の三点に要約できる。(1)同国南部イリンガ(Iringa)市北方の旧石器時代遺跡ムゴンガ(Mgonga)では2×2m.グリッドを3区画設定し、発掘調査を開始した。これによりこれまで湖成遺物包含層と考えられてきた最大層厚40m.以上の白色砂質層(ムゴンガ層)の大部分が基盤グラニトイドの深度風化物であり、白色砂質層上端に限定される小規模湖成層に包含される両面加工石器がアシュール後期に属し、同遺跡から出土する中期石器時代的遺物と年代的に非常に大きな差があるのではないらしいことが明らかになった。また帯状に分布していた遺物包含層の大部分がすでに失なわれ、遺物が表面に裸出したり、流出していて、適当な包含層を選定してグリッドを設けるのが困難であることが判明した。ムゴンガ周辺では石英製細石器を中心的遺物とする後期石器時代遺跡を発見した。(2)イリンガ市南方のイシミラ(Isimila)遺跡では準備調査を実施し、地表面に観察される遺物が周囲の包含土を失なう際に垂直方向にかなり大きく、水平方向にも多少移動したらしいことを確め、遺物の多次的推積性を理解し、今後の発掘区画設定の参考資料をえることができた。(3)同国中部のコンドア地区の岩陰遺跡調査では多数の岩陰遺跡が分布する広い地域から今後の発掘調査の対象になりそうな岩陰群をいくつか選んで準備調査を実施した。その結果、岩陰遺跡の使用開始年代が岩面絵画の推定年代よりかなり古く、中期石器時代までさかのぼりうる可能性があることを確認できた。ただし、岩陰を形成する岩体の移動の可能性が地質学的に指摘され、現在の岩陰に認められる遺物包含層と現在の岩陰との対応関係の検討が必要なことも判明した。 タンザニアでの調査はとくに同国国立博物館の全面的協力をえて順調に進行したが、文化庁考古課との連絡に若干の問題があり、困難がなかったわけではない。 2.ケニア共和国内での調査の成果は次の三点に要約できる。(1)モンバサ(Mombasa)市近くのムトングウエ(Mtongwe)遺跡(旧石器時代)では新たに2×4、2×0.5m.のグリッドを設定して発掘調査を進め、多数の遺物を発掘し、これまでの発掘調査をさらに発展させた。当遺跡の発掘調査の目標は、これまでの数次の発掘の対象となった数地点で確認された石器群の器種構成が地点によりまちまちであることを整合的に説明しうる資料をえることにあった。この問題を解決する発掘地点の選択が著しく困難であることから、今回の調査でも石器群差が大きな年代差または様式差によるのか、または同一文化内の遺跡の性格差とみなしうるのかを明らかにできなかったので、最終的判断を今後の課題とせざるをえなかった。(2)ムトングウエの周辺では、マバンダ・ヤ・ゴンベ(Mabanda ya Gombe)、ヌグタトウ(Ngutatu)、ミピラニ(Mipirani)、タンギーラ(Tangila)の諸遺跡を調査し、ケニア海岸部での旧石器文化の展開過程を明らかにする上で必要な資料を収集した。(3)周辺の地質学的調査では1×1m.の地質観察グリッドを十ケ所に設定し、これまでの調査で課題となっていたムトングウエの遺物包含層(「レッド・サンド」)の形成過程・年代、周辺での前期石器時代遺物の包含層存在の可能性の二点を判断するのに必要な資料を収集した。 ケニアでの調査も同国国立博物館の積極的な協力をえて順調に進行したが、同館と文化庁との間の連絡に若干の問題があり、困難がなかったわけではない。 赤道地溝帯からの旧石器文化の拡散、周辺地域での旧石器文化の展開過程を明らかにするために以下の内容の調査研究を計画している。1.タンザニアでは(1)ムゴンガ遺跡の発掘調査の推進、(2・3)イシミラ・コンドア岩陰遺跡の発掘着手、2.ケニアでは(1)ムトングウエ遺跡の最終的発掘、(2)周辺遺跡の発掘着手、(3)海岸部前期石器時代遺物包含層の地質学的解明が、具体的内容である。
|