研究課題/領域番号 |
63041097
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
権藤 与志夫 九州大学, 教育学部, 教授 (40037031)
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研究分担者 |
森川 哲雄 九州大学, 教養部, 教授 (50101275)
増田 泰久 九州大学, 農学部, 助教授 (40112320)
中田 稔 九州大学, 歯学部, 教授 (40014013)
丸山 孝一 九州大学, 教育学部, 教授 (80037035)
西谷 正 九州大学, 文学部, 教授 (20037005)
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研究期間 (年度) |
1987 – 1989
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キーワード | 少数民族 / 教育 / ウイグル族 / カザフ族 / 新疆 / 遊牧民 / 歯科人類学 / 生理人類学 |
研究概要 |
本研究は、従来、日本人による研究が殆んどなされることのなかった中国西域、新疆ウイグル自治区において、その少数民族ウイグル族、カザフ族、シボ族などを学際的、総合的に研究するところにその特徴を有する。多民族国家における少数民族の文化と社会とは、近年におけるソビエト連邦や東欧諸国の例を見るまでもなく、一層重要視されるべきであるが、われわれの研究は、圧倒的多数者である漢民族文化の中で生きるこれら少数民族の文化を尊重するという基本的立場に立ってなされてきた。また、九州大学との姉妹大学である新疆師範大学の全面的な協力をえて共同研究を実施した。 初年度(昭和62年度)は予備調査として、具体的な調査実施対象地を選択した。即ち、首都ウルムチ市他、その東200キロにあるトルファン地域、北部アルタイ地方の牧畜民、北西部のイリ地区におけるシボ族社会、西南部のカシュガル市を中心とするウイグル族社会などを候補地として選び、若干の予備的調査を試みた。新疆医学院やハ-農学院、社会科学院、自然科学院など、関連諸機関の協力に対して感謝すべきである。 第2年度(昭和63年度)には、各班とも本調査を実施した。比較教育学班ではウルムチ、イリ、カシュガル各地で、漢民族、ウイグル類、カザフ族等につき、小学校から大学に至る統計3,000名を越す児童、生徒、学生、教師、親などに対して質問紙調査を実施した。文化人類学班では、東南アジアや韓国で実施したものと同様の質問紙調査をウイグル族と漢民族について実施したほか、家庭教育の実態を観察、面接によって明らかにしようとした。考古学班では、新石器時代から漢・唐にかけての基礎資料を収集し、これらが新疆と朝鮮・日本で共通に分布していることを認めた。牧畜班では、アルタイ地区、イリ地区及びウルムチ地区の遊牧民に対する聞き取り調査や観察によって、牧畜の概況、特に季節別の利用草地の主な植生とそこでの家畜管理や生活の実態を把握出来た。医歯班は、ウイグル族とハザク族の小児及び青年約500名につき口腔診査を実施し、日本人との比較をした。また、新疆医学院との協力で、新たな知見が得られた。第3年度(平成元年度)には、第1に、九州大学と友好協定を持ち、一貫して本研究プロジェクトと密接な協力関係にある新疆師範大学から3名の共同研究者(額爾徳尼副学長、馬俊民教授、胡〓教授)を招聘した。このことによって、従来から収集した調査資料の解釈について多くの教示を得ることが出来た。当初の計画では1名だけの招聘であったが、民間からの資金援助を得て、3名を招くことが出来た。第2に、同様にして、本研究プロジェクトとは別の研究費によって、研究代表者の他、2名の研究分担者が新疆ウイグル自治区を訪問し、補足的なフィ-ルド・ワ-クをすることが出来た。第3に、研究成果の出版をした。これは当初、当研究費の一部で出版する計画であったが、われわれの調査研究は朝日新聞の注目するところとなり、同社より単行本として出版することとなった。研究代者権藤を編著者とし、6名の分担者全員が各々の専門的な立場より執筆し、学際的でユニ-クな調査報告書となっている。本書は現在印刷中である。 学際的研究の必要が叫ばれる一方、その方法論の確立が待たれている。本研究においても、われわれは常にそのことを議論してきた。現代科学の方法は、19世紀以来細分化を重ねてきたが、われわれは7人7様の専門分野をせめて部分的に重複させ、学際的視野を確保しつつ、総合科学の確立を目指してきた。本研究はそのような試みの一つである。 なお、本研究は現在もまだ進行中であり、そのため、研究成果の報告書は上記のものを含めて未だ準備中であるが、口頭では、平成元年9月から12月まで、10回にわたって公開講座「シルクロ-ドの少数民族と文化」を実施したほか、中国研究センタ-例会(森川)、日本モンゴル学会(増田)、第43回日本人類学会・日本民族学会連合大会(丸山、藤野)などの発表がある。
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