研究課題/領域番号 |
63043024
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
宅間 宏 電気通信大学, 新形レーザー研究センター, 教授 (70012200)
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研究分担者 |
J.L. Hall 米国NBS, JILA, フェロー
清水 和子 電気通信大学, 電気通信学部, 講師 (30017446)
清水 富士夫 東京大学, 工学部, 教授 (00011156)
HALL J.L. JILA, NBS
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研究期間 (年度) |
1987 – 1988
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キーワード | Dye Laser / Frequency Stabilization / RF Sideband Technique |
研究概要 |
レーザー周波数安定化の方法は、アメリカ合衆国コロラド州にあるJILA(Joint Institute for Laboratory Astrophysics)およびNBS(National Bureau of Standard)にてJ.L.Hall博士等により長年に渡って研究が行われてきた。特に色素レーザーに関しては、現在世界中で使われている連続発振波長可変周波数安定化色素レーザーシステムはここで開発された方法に基づくものである。周波数安定化の基本原理は、レーザー共振器を十分安定に製作したうえで、温度や圧力、実験条件に左右されない原子や分子の吸収線を基準にし、基準からのずれを検出してレーザー共振器にフィードバックをかけることにある。色素レーザーの場合には広い範囲で波長可変であるから周波数の基準として原子の吸収線を用いるのは適当でなく、温度を一定に保った安定な共振器が基準として用いられる。現在、市販の色素レーザーでは周波数安定度2ー3MHzが得られている。 本海外学術研究では、62年度にJILAにおいてKHzからSubKHzの安定度を得る方法に関する調査研究を行った。その結果、数KHzの安定性が必要な場合には、レーザー出力光に補正を加える外部安定化方式が最適であることが判った。この方式では、比較的遅い周波数の変動を音響光学変調器によって補正し、高速の変動を電気光学変調器を用いて補正する。レーザー共振器にはフィードバックをかけないので、光学素子やエレクトロニクスの調整をレーザー発振とは独立に行えることが大きなメリットである。基準周波数からのずれの検出には位相敏感検波を行うが、この時RFサイドバンド法を用いることにより高速の変調が可能になり、補正可能な周波数範囲も広がる。さらに共振器の透過光でなく反射光を用いることにより、共振器内の光の伝達時間による応答の遅れのないフィードバックシステムが製作可能となる。Hzオーダーの安定度を必要とする場合には、レーザー共振器内部に高速フィードバックのための素子を入れて制御する必要がある。いずれの場合にも基準となる共振器の安定性が最終的な周波数安定度を決めることになる。 63年度は上記調査結果に基づき、安定化の第一段階として、数KHzの安定度を目標に外部安定化システムの製作を開始した。まず、RFサイドバンド法を行う為の電気光学(EO)変調システムを製作した。変調素子としてQuantum Technology社製EO変調器タイプ28を用い、変調周波数を10MHzとして共振回路を作成、良好な動作結果を得た。 基準共振器として、既存の温度安定化をした共振器(Free Spectral Range 180MHz)を用いて予備実験を行った結果、音響光学(AO)変調器によるフィードバックのみで周波数揺らぎは170KHz以内に押さえられた。この値はフィードバック回路の入力信号の大きさと基準共振器のフィネスから求めたものであるが、FFTアナライザーによる周波数の観測では、3KHz以下の変動が減少していることが確かめられた。 数時間にわたるデータ蓄積を行うためには非常にゆっくりとしたドリフトも押さえる必要がある。この目的の為には、原子の飽和吸収線にレーザー周波数をロックするシステムを製作し良好な動作をすることが確かめられた。 この段階で、基準共振器の設計を行った。異なる次数の縦モードに属する横モードの周波数が重ならないこと、実現可能なフィネスで十分狭い共振線の幅になることを条件にミラーの曲率半径と共振器の間隔を決定した。 今年度はまた、J.L.Hall博士を招へいし、我々のシステムに関してアドバイスを貰い更に、高速のフィードバックエレクトロニクスに必要な回路素子に関する最新の情報及びそれを用いた新しい設計の回路についても多くのアドバイスを貰った。この時、JILAで行っている相関分光法に関するディスカッションを行い、我々の開発した超自然幅分光法と同じテクニックを応用することにより、相関分光法においても分解能の向上が期待できることが明らかになった。
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