研究課題/領域番号 |
63043053
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川島 健治郎 九州大学, 医療技術短期大学部, 教授 (30038690)
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研究分担者 |
KETUDAT Puns スリナカリン,ウイロート大学, 理学部, 助教授
賀 〓印 北京医科大学, 人民医院, 教授
杉山 広 大阪府立大学, 農学部, 助手 (00145822)
柴原 壽行 鳥取大学, 医学部, 助教授 (70116937)
吾妻 健 高知医科大学, 医学部, 助手 (40117031)
HO Lianyin Professor, Beijing Medical University People's Hospital, Beijing, People's Repub
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研究期間 (年度) |
1986 – 1988
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キーワード | Paragonimus / genetic variation / speciation / karyotype analysis / isozyme analysis / host specificity / China / Thailand |
研究概要 |
本研究は日本産ウエステルマン肺吸虫3倍体の起源を明らかにすると共にアジアに分布するウエステルマン肺吸虫群の種分化の機構を解明しようとするものである。我々は1987年7月ー9月の間、中国およびタイにおいて野外研究を行った。ここにその成績と過去2年間に行った実験成績をのべる。 中国本土においては、4省11地区の淡水産カニSinopotamon fukienense,Sinopotamon yangtsekiense,Malayopotamon fukienenseおよびザリガニCambaroides dauricusから肺吸虫メタセルカリアを得た。これらは幼虫と成虫の形態からウエステルマン肺吸虫と同定された。これらの虫の染色体の観察から2倍体、3倍体のほか2個体だけではあるが4倍体も見出された。しかし、4倍体が自然界において正常に増殖しているか否かは不明である。中国産肺吸虫3倍体のイヌ、ネコおよびラットにおける感染実験で、イヌ、ネコでは本邦産のものと、ほぼ同じ成績を示し、虫体の発育も良く、回収率も高かった。しかし、ラットでの発育は本邦産のものと同様に悪かったものの、肺で虫嚢を形成する傾向がより強く認められた。他方、同肺吸虫の電気泳動パターンは本邦産のものと同じであった。これに対して、中国産2倍体は本邦産の2倍体と異なり、その電気泳動パターンは多型を示し、とくに東北地方産のものでは本邦産3倍体の特有遺伝子の総てが高頻度に見出された。この事実は中国東北部産のある同肺吸虫2倍体集団が本邦産同肺吸虫3倍体形成に関与したであろうことを示唆する。 タイにおいては、Larnaudia Iarnaudii,L.beusekomae,Somanniathelphusa germainiおよびS.smithianaなど4種の淡水産のカニに肺吸虫メタセルカリアの自然感染を証明した。これらは幼虫および成虫の形態からParagonimus heterotremus,P.siamensis,P.bangkokensisおよびP.harinasutaiであると同定された。チュラロンコン大学において、肺吸虫成虫の封入標本を検する機会を得た。精査の結果、この虫はウエステルマン肺吸虫(2倍体)と同定された。しかしながら、タイ産ウエステルマン肺吸虫集団の遺伝的構造は不明のままである。 この研究の完成のためには、中国東北部において、さらに詳しい調査研究が望まれる。また、ウエステルマン肺吸虫はベンガルトラから得られた虫に基ずいて百余年前に命名されたが、その推定される産地において現存するこの虫の集団の寄生虫学的ならびに遺伝学的研究を必要とする。
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