研究課題/領域番号 |
63043068
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 学術調査 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 保忠 早稲田大学, 理工学部, 教授 (70063203)
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研究分担者 |
中川 武 早稲田大学, 理工学部, 教授 (30063770)
吉村 作治 早稲田大学, 人間科学部, 助教授 (80201052)
後藤 久 日本女子大学, 家政学部, 教授 (70060655)
稲垣 栄三 明治大学, 工学部, 教授 (70010668)
飯田 喜四郎 名古屋大学, 工学部, 教授 (80022987)
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研究期間 (年度) |
1985 – 1988
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キーワード | 設計方法論 / 日乾煉瓦造建築 / 古代的性格 / 住居論 / 王宮都市 / 方位軸 / 彩色画 |
研究概要 |
本研究は魚の丘建築と極めて関連の深いアメンヘテプIII世建造のマルカタ王宮を対象に、魚の丘建築との建築学的、美術考古学的比較研究を行うものであり、以下に主な研究成果を挙げる。 〈1〉マルカタ王宮と魚の丘建築、及び両者を結ぶ間の周辺に位置するそれぞれの関連遺跡について方位を計測し、配置計画に関する基礎資料の作成と、都市計画的視点における分析研究を行った。数次に渡って増築されたと推定されるマルカタ王宮遺跡がナイル川の流れる方角と密接な関係を持って計画された跡が分析結果より伺えた。 〈2〉マルカタ王宮建築中、最も中心を成すと目されるKing's PalaceとFestival Hallの測量実測を行った。1910年代のメトロポリタン美術館発掘調査隊による実測図では、縮尺があまりにも小さく、建築計画方法や設計方法などを分析する上で不適当であるため、現況を縮尺1/100で再び実測を行い資料とした。この作業はまた1910年代の遺跡の残存状況と、現況との比較を調査する目的も兼ね備えている。ほぼ80年を経過して、保存状態は憂慮すべき状態にあることが明らかにされた。煉瓦積み工法についても同時に調査が行われ、数種の積み方が記録された。 〈3〉発掘された夥しい量の彩色画片は分類されて、保存状態の良好な約2000の断片に関しては原寸大の模写が作成された。模写資料をもとに、以下の建築装飾に関して復原が行われた。 (1)ローゼット、スパイラル、スクロール、及びローゼット・ボーダーのパターン(いずれも列柱大ホールより出土)。初めて縮尺が明示されて復原が行われた。 (2)列柱大ホールより出土した彩色画片より、ハゲタカの姿を模したネクベト像が復原された。その翼長は5mに及び、彩画片の裏に残された痕跡から、この像は天井に描かれていたと想定される。このホールに立つ柱の間隔は、調査によって最大4mと確認されたことから、ネクベト像は9mの幅を持つホールの横幅いっぱいに渡って描かれていたと推定される。ネクベト像の存在それ自体は既に報告されていたが、復原図としてマルカタ王宮のネクベト像が実際に作成されたのは初めてである。この復原は、大ホールの天井形式の復原と密接に関わる問題であり、今回の復原において、バダウィの復原案に対し、強い疑問が提示された。 (3)「王の寝室」からは数多くの彩色画片が出土した。これらの断片よりサァ・ラー名及び上下エジプト王名が復原され、共にアメンヘテプIII世の王名であることが再確認された。上下エジプト王名に関しては、3種類の修辞が描かれている点が今回初めて明らかにされた。サァ・ラー名は、W.C.ヘイスが触れているように漆喰で消されていたが、彼が報告している描法とは若干異なり、ヘテプが〓ではなく〓と記されている点が明らかとなった。「王の寝室」に描かれていた天井画のネクベト像も復原され、これを参照して、「王の寝室」天井全体の復原図も初めて作成された。列柱大ホールにおけるネクベト像の描法、及びTiy宮の列柱ホールにおけるネクベト像の描法と比較すると、興味深い相違が見られ、これらが年代的な差異をあらわすものかどうかは今後のくわしい考察が待たれる。 〈4〉王宮建築の性格を明らかにするため、「王の寝室」と似た形式を持つ他の部屋に関しても実測調査が行われ、「王の寝室」と比較分析が行われた。平面の寸法関係において、比例としては相似している点を持つものの、「王の寝室」と、その他の人間が用いる寝室(例えばハーレム内における寝室)では、天井彩色画に相違のあることが、比較研究の結果明らかにされた。
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