研究分担者 |
F.D. ジュマ ナイロビ大学, 医学部, 教授
J.O. オゲット ナイロビ大学, 薬学部, 講師
岸田 袈裟 岩手医科大学, 医学部, 研究生
市丸 百代 神戸女子薬科大学, 薬学部, 講師 (00175259)
福岡 誠行 頌栄短期大学, 生物系, 教授 (90071430)
KISHIDA Kesa Researcher, Iwate Medicinal University.
OGETO J.O. Lecturer, University of Nairobi, Department of Pharmacy.
JUMA F.D. Professor, University of Nairobi, Department of Medicine
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研究概要 |
I.アフリカ地域の民族生薬の研究:ケニア国のハーバリスト(伝承医、呪術師、少くともアフリカの生薬を医療の目的で取り扱っている人)10名〔カレンジン族(キスム地方)、ルオー族(キスム、マチャコス)、キクユ族(マチャコス、モンバサ)、カンバ族(マチャコス、ゴングヒル)、マサイ族(ゴングヒル)、ディゴ族(クワレ)、ギリヤマ族(カロレーニ)〕を選定し、彼等の用いている薬物及びその用途について踏査し、概観を把握することが出来た。次にマサイ族及びカンバ族の用いる生薬90種を収集し、それぞれの基原の固定を試みる。そのうち60種については同定が出来た。マサイ族が用いる6種の一次生理活性スクリーニングとしてC-AMP-ホスホジエステラーゼ阻害活性試験を行い、その結果、強い活性度を示すものがあった。例へばOL-ERBAT(土名、マサイ)、Acacia nilotica(マメ科)は阻害率(%)が74%(20μg/ml)であり、有効成分の検索の面からも、今後さらに高次のスクリーニング試験を検討するに値する。またギリヤマ族(カロレーニイ)の用いる生薬51種について、強心作用試験を行ったところ、8種のものに活性が認められ、心不全改善、心房収縮力(in vit.μg/ml.%)の結果から、さらに高次評価試験の実施に移せるものと考察する。この強心作用を示す生薬の中にはバンレイシ科のものが多く、しかも生育分布が主に海岸地帯であることから、カロレーニ地域のギリヤマ族が入手しているこれらの生薬原料は彼等の生活圏の比較的近い地域で賄われていることが明らかとなった。 II.アフリカ地域の未利用薬物資源に関する研究:ケニア国に生育するカシポリア属(ヒルギ科)植物4種(Cassipourea malosana,C.gummiflua,C.euryoides,C.celastroides)についての生態及び形態調査を行い、次いで、それぞれの樹皮について成分研究を行った結果、数種の新規の含イオウアルカロイドを確認し、そのうち3種の化合物については化学構造を決定し、C.malosana及びC.gummifluaから単離されたものをisocassipourine,C.euryoidesから得2種の化合物をguinesine D.およびeuryoidineとそれぞれ命名することができた。これらの化合物は各種の生理活性試験および薬理試験などを通して医薬品への応用を検討中である。 以上ケニア国に生育するカシポリア属4種を取り扱っただけでも、多くの新規化合物が認められ、しかも化合物の構造、性状などから医薬品への応用などの点で、他のカシポリア属植物は今後も未利用薬物資源の研究対象として、十分価値あるものと考察する。
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