研究課題/領域番号 |
63044005
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
神谷 正男 北海道大学, 獣医学部, 教授 (30081665)
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研究分担者 |
OOI Hong Kean 北海道大学, 獣医学部, 助手 (40223440)
大林 正士 酪農学園大学, 獣医学科, 教授 (60001517)
岡本 宗裕 大阪大学, 医学部, 助手 (70177096)
GARDNER Scot カリホォルニア大学, 農業環境科学部, 講師
WILSON Josep アラスカ医寮センター, 外科部長
RAUSCH Rober ワシントン大学, 医学部, 教授
奥 祐三郎 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (60133716)
阿部 永 北海道大学, 農学部, 助教授 (80001428)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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キーワード | エキノコックス / アラスカ / 代替終宿主 / 糞便抗体 / テニア科条虫 / ハムスタ- / 多包虫症 / スナネズミ |
研究概要 |
エキノコックス群は家畜や人体に病害をもたらす寄生虫として世界的に注目を集めている。そのうち、とくに北方圏を中心に分布する多包条虫は重要でその防除には野生動物や家畜を含む自然環境動態を考えた総合的な対策が必要である。そのため、アラスカをフィ-ルドとして実績のあるワシントン大学の研究グル-プと共同で両国の汚染地域での多包条虫の防除に関する研究を実施した。 米国側は、エキノコックス症の流行地として知られているベ-リング海のセントロ-レンス島を中心に人体への感染源として住民が保有するイヌを重要視し、同島のサブ-ンガ村でプラジクアンテルによる駆虫を1982年から実施していて,その効果を村内の野鼠の感染率の変動で把握することに重点をおいた。日本側は多包条虫と近縁種を自然界から分離し、それらを実験室へ持ち込み,多包条虫と競合種との交差抵抗性を基礎にした多包条虫の生物的防除の可能性を検討するとともに、北海道東部における汚染地域での疫学的調査や実験室内での終宿主に関する研究を行った。 1)セントロ-レンヌ島での現地調査に先だち、毎年6月初句にアンカレッジのアラスカ先住民医療センタ-(ANNC)で研究打ち合せを兼ねたシンポジウムを開催した。また、最終年度の1990年6月には米国政府Center for Diseases Control(CDC)主催の多包条虫症に関する国際ワ-クショップに協力・参加し、成果を報告した。米国側からは、セントロ-レンス島におけるイヌに対する駆虫を主とした対策の総括、諸外国の防遏対策、日本側からは北海道における汚染状況、診断や対策の実情などについて発表した。2)イヌに対する駆虫薬投与を開始した1982年まではその感染率は25%であったが、1983年19%、1984年11%、1985年2%以下と低下した。1986年14%と上昇した。その後、1987年7%そして1988年(1)村内2.7%、(2)周辺部4.7%、(3)さらに外側20.4%であった。プラジクアンテルによるイヌの駆虫が理論的には住民への感染圧を減少させることを示した。3)エキノコックスと近縁種の分離とエゾヤチネズミにおける交差抵抗性:アラスカで分離したものを含め競合寄生虫としてエキノコックスと近縁のテニア科条虫4種8分離株を実験室内で継代した。これらの種内ならびに種間の差異についてオリゴヌクレオチドプロ-ブを用いたDNAフィンガ-プリント法を用いて検討した。また、北海道にたDNAフィンガ-プリント法を用いて検討した。また、北海道においてエキノコックスの主な中間宿主であるエゾヤチネズミを実験動物化し、これを「場」としてエキノコックスと競合関係を調べた。一部の分離株:Taenia taeniaeformis Crb株虫卵をエゾヤチネズミに経口投与し、2および3週後にエキノコックス:Em(H)株虫卵を経口投与したところ、いずれの群もCrb株の感染がエキノコックスのエゾヤチネズミ肝臓で形成シスト数を抑制することが明らかになったが、エキノコックス感染を100%抑えるまでには至らなかった。4)北海道における疫学調査:終宿主および中間宿主の生活環とそれらの分布の諸デ-タを多量変解折学的手法を用いて総合的に解折したところ畜産廃棄物が冬期の食物の供給源になることでキタキツネの個体群密度が増加し、本症の流行を促進するという説(Abe、1975)を指示していた。5)終宿主に関する研究:ニュ-メキシコで肉食性のキヌゲネズミ科バッタネズミ(Onychomyssp.)を中心に、同地城の齧歯類10種を捕獲し、エキノコックスに対する終宿主の代替動物の可能性を検討したところ、正常のカンガル-ラット(Dipodomys spp.)ポケットマウス(Perognathus spp.)、ウッドラット(Neotoma sp.)などにおいて感染初期に自然終宿主・イヌに匹摘する回収率と一部虫体の発育が認められた(未発表)。プレドニゾロンで処置したゴ-ルデンハムスタ-ならびにスナネズミを用いて代替終宿主モデルを確立することが出来た(Kamiya&Sato,1990a.Parasitology;1990b,FASEB J.)。また、無処置のゴ-ルデンハムスタ-を用いてエキノコックス成虫に対する再感染防御の存在やモノクロナ-ル抗体を作成し感染犬糞便内抗原の検出の可能性を示した。
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