研究課題/領域番号 |
63044066
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 忠直 京都大学, 理学部, 助教授 (90093187)
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研究分担者 |
THOMAS Stoss ハーバード医科大学, 教授
KEN Zaner ハーバード医科大学, 助教授
佐藤 智 京都大学, 理学部, 助手 (30183049)
STOSSEL Thomas Professor, Harvard Medical School
ZANER Ken Associate Professor, Harvard Medical School
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研究期間 (年度) |
1988 – 1989
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キーワード | アクチンフィラメント / 集合状態の多形態性 / 相図 / オスモエラスティック・カップリング / 細胞骨格 / 浸透圧 / 細胞の体積調節 / カルシウム |
研究概要 |
本科学研究費補助による研究の成果は、以下の四つに大別される。 1.オスモエラスティックカップリングによるアクチンフィラメント束状構造形成の解析 溶液中のアクチンフィラメントが高分子量のポリエチレングリコ-ルの添加により、束状構造を形成することを初めて見いだし、その機構を解析した。そして、添加高分子がフィラメント表面から選択的に排除されることにより生じた浸透圧の不均衡とフィラメントの弾性要素とがカップリングする結果、分散状態のフィラメントの自由エネルギ-が上昇し、そのため束状構造が形成されるということを明らかにした(オスモエラスティック・カップリング)。 2.アクチンフィラメントの液晶形成の解析 アクチンフィラメント溶液の偏光性を定量的に解析することにより、アクチンフィラメントが液晶を形成することを初めて、定量的に明らかにした。即ち、通常の方法で調製した、平均の長さが3.4μmのアクチンフィラメントでは、2.5mg/ml以上で液晶が形成されはじめ、7.0mg/ml以上では、全てのアクチンフィラメントが液晶状態となった。 アクチンフィラメントを特異的に切断するゲルゾリンを用いて長さの異なるフィラメントを調製し、それを用いることにより、液晶を形成し始めるアクチンの濃度が長さに反比例することを定量的に示した。 偏光性の角度依存性を定量的に調べることにより、液晶中のフィラメントの配向度を解析し、ほとんどのフィラメントがその軸を10度以内に配向していることを示した。 3.アクチンフィラメント溶液のphase diagramの決定 フィラメントの濃度及び分子間力をパラメ-タ-として、アクチンフィラメントのphase diagramを決めた。そのphase diagramはフィラメントを硬い棒状分子とみなして理論的に求めたものとよく一致した。 ゲルゾリンはphase diagramに次の様な二相的な影響をあたえることが明らかになった。 (1)actin subunitとゲルゾリンのモル比が1000:1の低濃度では、カルシウム存在下でバンドル化を促進する。 (2)モル比が1000:1以上では、等方集合構造を安定化する。 4.浸透圧応答における細胞骨格構造の役割 アクチンフィラメントとそれに特異的に相互作用するタンパク質のABPにより、細胞皮質にみられる細胞骨格構造をつくることができる。オスモメ-タ-をモデル細胞として用いた実験systemにより、細胞の浸透圧応答における細胞骨格の役割を研究し、以下の結果を得た。 (1)actin subunitとABPの比がゲルポイント以上になれば、内外の浸透圧の不均衡(osmotic stress)に伴う膜を介しての水の流れは、完全に停止する。 (2)μMオ-ダ-のカルシウムイオンは、ゲルゾリンの活性化を通じて、osmotic stressに伴う水の流れをコントロ-ルすることが出来る。 以上の結果は、非筋細胞が内外のイオン濃度の変動などに伴うosmotic stressにさらされた場合、細胞骨格が一種のクッションとして働き、内部の恒常性を維持するという細胞骨格の新しい機能を示唆する。
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