研究課題
国際学術研究
京都工繊大の分子組織体の光物理化学、レ-ザ-ホトリシスについての経験と、ル-バン大学の分子組織体の構成、2量体モデル化合物の合成、単一光子計数法、その解析法とが相まって、以下に示す様な結果を得た。1)従来より、2量体モデル化合物の蛍光、燐光、カチオン、アニオン各状態の吸収スペクトルを系統的に測定し、クロモフォア間の電子的相互作用、幾何学配置、スペクトルの関係を調べてきた。このような研究の総仕上げとして、メゾ及びラセミービス[1ー(2ーピレニル)エチル]エ-テルの単一光子計数法による蛍光測定とピコ秒過渡吸収測定を行った。その結果、イソオクタン中の分子内エキシマ-生成の熱力学定数及び速度定数を決定した。又、1/3分子内回転をする時間としてメゾ体の場合280ps、ラセミ体の場合20nsと大きな差のあることが明らかになった。この化合物は、最も重要なピレンエキシマ-のサンドイッチ構造とそれに伴う各パラメ-タを実験的に最終的に確立するものである。2)長鎖チオ-ルと対イオンとしてカドミウムイオンを用いて単分子膜更にLangmuir-Blodgett(LB)膜を作れば半導体的性質をもつ興味ある薄膜ができると期待される。1ーオクタデカンチオ-ルを用いて調べたところ、カドミウムイオンでは安定な単分子膜を生成せず、安定な積層膜を生成することがわかった。この安定な積層膜は非常に珍しいものである。対イオンとしてバリウムイオンを用いたとき、安定な単分子膜が得られた。対イオンのイオン半径、膜の吸収スペクトルなどの考察より、単分子膜、積層膜の安定性には、イオンの大きさ、イオン対の平衡定数が非常に重要な因子であることがわかった。3)アントラセンまたはペリレンの薄膜単結晶上にω(2ーアンスリル)アルカン酸の単分子膜、更に長鎖を有する色素とアラキン酸の混合物の単分子膜を累積した。色素を光励起することにより、ホ-ルが色素から単結晶へ(電子が単結晶から色素へ)移動する。この時の電流は、アルカン酸の長さが長くなるに従い減少し、色素のイオン化ポテンシャルが小さいほど、この依存性が大きくなった。またアラキン酸の代わりにパルミチン酸を用いたときには、アラキン酸の時に比べ光電流の収率は約1/10に減少した。これらの結果が、色素とアルキル鎖の最高被占軌道間の相互作用、両単分子膜の間の界面でのポテンシャル差の変化などにもとずいて議論された。
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