研究課題
国際学術研究
昭和63年度〜平成元年度に計画した研究計画はほぼ順調に消化出来た。以下その成積を述べる。1.インタ-フェロン(IFN)-γによる刺激で、マウスマクロファ-ジ(Mφ)内へのCa^<2+>の流入は刺激直後には認められなかった。このことは、IFN-γによるマウスMφの活性化のシグナルが外部からのCa^<2+>には依存していない事を示している。2.IFN-γによるマウスMφ内のプロテインカイネ-スCの活性化は確認されなかった。3.マウスサルモネラ感染症において、IFN-γあるいは他のサイトカインであるインタ-ロイキン(IL)-1βや腫瘍壊死因子(TNF)-αの単独投与はある程度有効な感染低抗性を賦与したが、これらを併用して投与すると、さらに低抗性の増強が認められた。その際、IFN-γをIL-1βやTNF-αと同時に投与した場合に感染低抗性が増強する事から、IFN-γは単にprimingとして働いているのではない。4.顕微自動解析装置(CAM-500)を用いて、IFN-γ刺激によるマウスTリンパ球、Bリンパ球、MφでのpHや膜透過性、Naイオンの流入などを測定したが、IFN-γ刺激によるこれらの細胞内シグナルのインディケ-タ-には変化は認められなかった。5.IFN-γで刺激した後のマウスTリンパ球、Bリンパ球、Mφにおいて、IL-1やTNFの産生が誘導されているかを検討したが、生物学的に有意な量のIL-1やTNFの産生は認められなかった。又、サイトカインのメッセンジャ-RNAの発現が誘導されている可能性がある為にIL-1βとTNF-αのメッセンジャ-RNAの発現を検討したが、これらのサイトカインのメッセンジャ-RNAの発現は検出出来なかった。これらの結果は3の結果とは矛盾しない。6.近年、Mφ活性化の細胞内シグナルの1つと考えられているジアシルグリセライドや中性リピドの合成をIFN-γ刺激Mφで定量したが、著明な増加は検出出来なかった。7.IFN-γは直接的にMφを活性化しえなくても、休止期のMφを刺激に対して応答性の状態に変える事が知られている。ムラミルジペプチド(MDP)は、単独では正常のマウスMφに作用させても、IL-1産生を誘導する能力がない。しかし、予めIFN-γを投与しておいたマウス由来のMφにMDPをin vitroで作用させると、intracellularのIL-1もextracellularのIL-1も著名に産生が認められた。in vitroで正常MφをIFN-γで刺激しても、MDPによるIL-1の産生が認められない事から、IFN-γが直接Mφに作用して活性化するのではなく、priming signalとしてその他の細胞を介してMφをMDPに応答性の状態に変えていると思われる。8.IFN-γをマウスに投与するとナチュラル・キラ-細胞が活性化され、レジオネラ(Legionella pneumophila)の感染に対して抵抗性を賦与することを見出した。9.IFN-γのマウスMφの活性化の機序として、細胞内シグナル伝達への影響が考えられる、しかし、Ca^<2+>の流入、プロテインカイネ-スCの活性化、pHや膜透過性の変化、Naイオンの流入、ジアシルグリセライドや中性リピドの合成は確認できなかったけれども、各種の細胞機能の発現に際して抑制的に作用するcyclic AMPの合成に必要なadenylate cyclaseの活性化を抑えていることが明らかになった。
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