研究課題/領域番号 |
63044174
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研究種目 |
海外学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
油井 大三郎 一橋大学, 社会学部, 教授 (50062021)
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研究分担者 |
宮島 喬 お茶の水女子大学, 文教学部, 教授 (60011300)
田中 克彦 一橋大学, 社会学部, 教授 (10014432)
岸田 尚友 豊田工業大学, 工学部, 助教授 (20148349)
津田 真徴 一橋大学, 社会学部, 教授 (00017625)
COHEN Robin University of Warwick
ROSENSTEIN Eliezer Israel Institute of Technology
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研究期間 (年度) |
1988
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キーワード | 国際化 / 民族意識 / 経済倫理 / 外国人労働者 / 多人種・多民族社会化 / 文化変容 |
研究概要 |
9.18〜21に実施された国際研究集会の開催が今年度の中心的課題であったが、そこでは、第一に、1970年代以来転換期の様相を深めつつある先進諸国の労使関係について検討した。まず、ローゼンシュタイン教授から西欧において新しい労使関係の模索が始まっていることが指摘され、その一例として「勤労生活の質(Quality of Working life)」運動が紹介された。ついで、マオア教授は、労使関係をその対立的側面に注目した「デュアリズム」の視点から日本の労使関係を分析する報告をおこなったのに対して、津田教授からは、終身雇用制を特徴とする「日本的経営」が近年ゆきずまりを見せているとする指摘がなされた。 第二には、経済発展に伴う民族意識の変容、とりわけ、外国人労働者の大量流入による多民族・多人種社会の形成がその国の民族意識に及ぼす影響について検討が加えられた。まず、チャンドラ教授から政治的独立の達成後に途上国が直面する自律的な国民経済建設上の諸困難についてインドの場合に即して具体的に指摘された。ついで、コーエン教授からは、第二次世界大戦後の西欧でみられた大量の外国人労働者の流入問題が紹介され、特に、これらの労働者の置かれた法的・社会的地位の差について、市民・準市民(デニズン)・ヘロットの三区分に基ずく詳細な分析がおこなわれた。その上で、田中教授からは、言語が近代の民族国家の統合の際に重要な役割をおわされたこと、その結果、言語は異民族や異人種間のコミュニケーションを切断する役割を果たしてきたという鋭い指摘がなされた。 以上の報告を踏まえて、様々な角度から討論がなされた結果、幾つかの興味深い事実が検出された。まず、近年の経済摩擦の激化に対応して日本企業の「多国籍」化が避けられないであろうが、その結果、日本の独自性を強調しがちな「日本的経営」の理念も自己脱皮を迫られるであろう点が指摘された。ついで、民族意識の変容のレベルでは、今後、外国人労働者や留学生の流入などの「ひとの国際化」が進むにつれて、従来「単一民族国家」的イメージの強かった日本の場合も、自己像の転換が避けられなくなるであろうことが強調された。なお、この研究集会参加者は、9.19〜20.の両日、一橋大学社会学部主催の国際シンポジュウム「転換期世界の文化変容」にも出席し、他の参加者とともに、関連した報告をおこなった。その記録は近く、Hitotsubashi Journal of Social Studiesの特集号として英文で発表される予定である。
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