研究課題/領域番号 |
63045008
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 (1989-1990) 秋田大学 (1988) |
研究代表者 |
本多 朔郎 秋田大学, 鉱山学部, 教授 (50006631)
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研究分担者 |
RATANASTHIEN チェンマイ大学, 理学部, 助教授
山元 正継 秋田大学, 鉱山学部, 講師 (80191443)
北 逸郎 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (10143075)
高島 勲 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (50163192)
秋林 智 秋田大学, 鉱山学部, 助教授 (90006669)
RATANASTHIEN Benjavun Faculty of Science, Chiang Mai University
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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キーワード | タイ国 / 地熱資源 / 熱源評価 / 貯留層工学 / 年代測定 / 同位体化学 / 土壌ガス |
研究概要 |
タイの地熱は、ヒマラヤ造山帯の後背地の安定地塊上に発達するもので、火山活動を伴っていない。しかし、高い地殻熱流量で特徴づけられ、沸騰泉を含む多数の温泉が認められる。そのような非火山性の地熱活動の熱源・湧出機構等を解明し、火山性地熱で発達した探査法の有効性を検証するため、以下のような項目の調査・研究を行い次のような成果を得た。 1.温泉・土壌ガスの分析ーー地熱貯留層に関連するとみられる断裂付近では、CO_2ガス中の^<13>C同位体およびラドンガスの濃集が認められた。地下の高温を示すH_2ガスは一部の地域の温泉に伴ってみられたが、全体としては少なく、火山性地熱とは異なっている。He同位体からは、マントル物質の寄与の可能性が指摘された。 2.新期火山岩の解析ーー第四紀後期の玄武岩溶岩、スコリヤ分布域の地質図を作成し、火成活動が深部断裂と関連している可能性があることを指摘した。また、火山岩の化学分析から、各々の火山はマントルから独立に上昇してきているものと推定された。 3.岩石中の放射性元素の分析ーー花崗岩を中心に約100個の試料を採取し、放射性元素(U、Th、K)の分析を行った。その結果、非常に高い含有量が記録され、その値から計算された発熱量として8ー18HGUが得られた。この値は、地下3ー5kmで300℃という高温を可能にするものである。 4.変質岩及び火山岩の年代測定ーー変質岩は石英脈、方解石脈を主体に年代測定を行い、現在の地熱徴侯地以外では数10ー100万年を超える古い年代が得られ、非火山性地熱が長期間継続することが確かめられた。また、火山岩については、玄武岩を主体に約10個の年代測定を実施中であるが、地質調査の結果からは、70万年よりは新しい年代が期待されている。 5.変質岩及び温泉水の化学分析ーー変質岩約50個温泉水約20個の試料を採取するとともに、地表の変質帯分布図を作成した。温泉水については、酸素および水素の同位体分析を行い、岩石ー水反応の解明を試みたが、地下に供給される天水に大きな季節変化があり、一回の分析結果のみからは議論を行うことはできなかった。 6.流体包有物の測定ーー年代測定を行ったのと同じ石英脈、方解石脈試料について測定を行い、ボーリング・コアでは現在の地下温度とほぼ同じ値が得られた。 7.貯留層モデルの作成ーー標高、坑井位置などのデータをもとに貯留層のコンピュータモデリングを行い、510、3510、8610年後の貯留層の状態を推定した。 以上の結果を総括すれば、タイの地熱は主として放射性元素の崩壊熱による高温部を通過した水が熱の供給を受け、高温になったものと思われるが、He同位体や、若い玄武岩の存在から火成起源の熱の寄与もあるものと思われる。探査法については、非火山性地熱でも火山性地熱とほぼ同じ手法が利用できることが明らかとなった。残された問題として、異常に高いHe濃度の原因、流体包有物から予想される地下温度が地化学温度計で求められた温度より低いことなどがあり、さらに検討を進める必要がある。
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