研究分担者 |
魏 燕 北京医科大学, 口腔医学研究所, 助理研究員
鄭 剛 北京医科大学, 口腔医学研究所, 工程師
王 光和 北京医科大学, 口腔医学院, 院長
徐 恒昌 北京医科大学, 口腔医学研究所, 教授
福田 秀昭 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助手 (50014163)
永井 正洋 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助手 (10013971)
高久田 和夫 東京医科歯科大学, 医用器材研究所, 助教授 (70108223)
UEI Ian Beijing Med. Unvi., School of Stomatology, Assistant
ZHENG Gang Beijing Med. Univ., School of Stomatology, Engineer
WANG Khung Beijing Med. Univ., School of Stomatology, Professor
XU engchang Beijing Med. Univ., School of Stomatology, Professor
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研究概要 |
歯科用接着性材料の耐久性に関しては,接着力の耐久性に留まらず,辺縁封鎖性や耐破折性,耐摩耗性など多岐にわたる観点から検討することが必要である. 1.歯科用接着性材料として最も代表的なコンポジットレジンについては,その耐摩耗性が臨床的に大きな問題となっている.この現象についてはマトリックスレジンの摩耗とレジンとフィラ-間の接着界面の劣化によるフィラ-の脱落が主体であり,マトリックスレジン自体の耐摩耗性は材質がレジンであることから改良に限界があることから,今後はレジンとフィラ-間の界面の改良が問題になるものと思われる.そこで本研究では口腔内での劣化に近い状態でのコンポジットレジンの耐久性を調べるために,コンポジットレジン試料と鋼製円柱の間にラバ-粉末などを含む柔らかい材料を介在させた摩耗試験機を製作した.そしていくつかの歯科用修復材料について摩耗試験を行ったところ,臨床的に知られている口腔内での摩耗と類似した摩耗が実現できた. 2.口腔内でのコンポジットレジンの界面劣化現象をシミュレ-トするために,マイクロフィラ-タイプおよび最近話題となっているレジンインレ-用コンポジットレジンを試料として採用し,試料に繰返し圧縮荷重および繰返し引張り荷重を負荷した後に摩耗試験を行ない,摩耗量を測定するとともに摩耗面を走査電顕により観察した.その結果,圧縮耐力の1/3という大荷重を1,000,000回にわたって繰返し負荷しても,摩耗量の増大は生ぜず摩耗面の変化も観察できなかった.口腔内のように水分の常在する環境下での劣化では環境応力効果により劣化が促進されるが,空気中での繰返し荷重では機械的応力のみが負荷されることから劣化がきわめて少ない.最近になって市販された製品では改良が進み,フィラ-とレジンの界面の結合やレジン自体の強度も相当程度のところまで来ていることが確認された. 3.補綴物を固定するために用いられるレジンセメントなどの歯科用接着材に関しては,やはり接着力の耐久性が最大の問題である.そこで水中にて一定荷重を負荷することのできる治具を製作し,コンポジットレジン型レジンセメントを用いた金属接着試験片を対象として,機械的応力と水分環境が接着力の劣化に及ぼす影響について実験した.その結果,接着力の劣化においては機械的応力と水分環境の同時作用が重大な影響を持ち,空気中での応力負荷,あるいは水中であっても無荷重状態では強度劣化が極めて遅いことが分かった.また機械的応力の形態に関しては,せん断応力よりも引張応力の方が劣化をはるかに促進する効果の大きいことが分かった. 4.レジンセメントなどの歯科用接着材については,二次う喰を防止するために,さらに辺縁封鎖性も重要な問題になる.そこで上記の水中にて一定荷重を負荷することのできる治具に接着破壊にともなうき裂の進展を推定できる接着試験片を装着し,コンポジットレジン型レジンセメントとフィラ-を含まないレジンセメントについて,レジンの物性が破壊特性に及ぼす影響について実験した.その結果,レジンの剛性が柔らかい場合には接着の破壊にともないき裂はゆっくりと進行していくが,フィラ-を含有しレジンの剛性が高い場合には,接着の破壊はき裂が発生するまで全く生じないが,一旦き裂が発生すると一瞬でき裂が進展し最終破壊に至ることが分かった.
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