研究課題
国際学術研究
横浜市立大学医学部病院に通院中の994例の変形性膝関節症例(膝OA)について調査し、日本人における膝OAの特微を検討した男230例,女714例で男女比は1:3.1と女性に多い。年令分布は、35才〜85才まで平均61.8±9.5才(男62.8±10.2才、女61.5±9.3才)で、特に66〜70才の範囲が最ま症例数が多く、本疾患が高齢者に多発することが確認された。体重は男平均62.3±8.9kg・女平均55.4±8.5kgであった。同世代の正常人体重と比較して有意に重く、膝関節が荷重関節でもあることから、本症発症の一因と考えられる。罹患膝の左右差について、1242膝中右は627膝、左615膝とほぼ同数で左右差は見られず、両側罹患者が多いことが分った。一次性(特発性)のものは1110膝、なんらかの疾患後に発生した二次性(続発性)のものは132膝であり、一次性関節症が大部分を占めた。立位X線像より狭小化のある部位による型分類では狭小化のない初期型30.3%内側にのみ狭小化のある内側型41.9%、内側・膝蓋型19.6%、外側型2.8%、膝蓋型2.1%、全型1.9%、内側・外側型0.8%、外側・膝蓋型0.6%、であった。また罹病期間5年以上は2部位以上に狭小化のある型で65%を占めており、疼痛のために日常生活が障害される例は狭小化のみられる膝で多い。正座不能症例は2部位以上に狭小化のある型で91.1%を示した。関節水腫はいずれの型においても30〜40%であった。連続歩行距離が500m未満の障害は狭小化のある膝で高頻度に認められた。膝の屈曲は大部分の76.1%は135以上可能であった。屈曲拘縮は51%以上か10以上を示した。また歩行時の膝外側方動揺は、膝外側角(FTA)が173゚以上の例でみられ、185゚以上の内反膝では98%のほぼ全膝に見られた。大腿四頭筋力は膝伸展位下肢挙上における足関節部に加えうる最大負荷量は正常高齢者8.0±1.6kgに対し内側・膝蓋型で6.8±2.4kgで筋力低下が認められた。上海市第二医学院では、229例(311膝)の膝OAを調査した。男88例・女141例で男女比は1:1.6と女性が多い。年令分布は、26才〜76才まで平均52.3±11.7才(男52.7±11.7・女52.1±11.8才)であった。罹患膝の左右差については右67膝、左86やや左側が多かった。二次性OAは28例で一次性OAが大部分であった。立位X線像より狭小化のある部位による型分類では初期型49.5%、膝蓋型25.7%、内側・膝蓋型15.4%、全型3.9%、内側型3.5%、内側型1.0%、外側・膝蓋型0.6% 内側・外側型0.3%の順であった。罹病期間5年以上・日常生活が障害される例・関節水腫・連続歩行距離500m未満の障害については日本と同様の所見を支した。しかし正座の習慣はなく正座の調査はできなかった。また関節鏡は83例(84膝)男32例(32膝)、女51例(52膝)年令35〜68才、平均52.3±10.5才であった。軟骨のビランが最も多く、ついで軟骨の黄変化、が多く、軟骨潰瘍が12%程度に見られた。軟骨ビランは大腿骨面と膝蓋骨に多く見られた。また線維束状化は膝蓋骨に多く見られた。手術時採取された軟骨の電顕像は軟骨細胞に関しては核のpyknosis、細胞質には脂肪滴、グリコ-ゲン顆粒・細線維が見られた。ライソゾ-ム、ミトュンドリアは腫大し、粗面小胞体は拡大、軟骨細胞の壊死などもあり関節鏡的OA進行につれ以上の所見が多く見られた。軟骨基質の変化では、脂肪片・多数のコラ-ゲン線維・時に線維芽細胞も見られ退行変性の存在を支した。またこれらの所見は関節鏡的OA進行につれ多く見られた。テトラサイクリンラベル法による骨新生は脛骨の軟骨下骨部の硬化部で多く見られ、荷重の集中部軟骨変性の高度部に生じていた。同じ同洋人である日本人と中国人間での変形性膝関節症の相違点の有無を調査したが、型分類上本邦では内側型、内側・膝蓋型が多く内反膝変形を呈する者が多かったが、中国では、内側・膝蓋型は比較的多かったが、膝蓋型の率が多く、型分類上差が認められた。この差は(1)日本人では正座の習慣があるが、中国では西洋と同じく椅座生活であること、(2)中国で60才以上の来院者が少なかった。(3)自転車の使用が一般的で膝蓋大腿関節の負荷が多い、(4)体重が軽い傾向が見られるなどの諸点が原因と推測された。
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